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第1話外伝 「王子と令嬢対墓喰いフェゴール 」

この作品にはChatGPTが生成した文章が含まれています。ChatGPTの規約は以下の通りです。https://openai.com/ja-JP/policies/row-terms-of-use/

大広間に響く、低い咆哮。

 まるで大地そのものが息をしているようだった。


 王城で荒れ狂っていた魔獣〈墓喰いフェゴール〉を、私たち――ポムパンドラとラゴス殿下は、被害を最小限に抑えるため、わざとこの無人の大広間へと誘い込んだのだ。

 窓は砕け、光が差し込む。普段の煌びやかな舞踏会の名残が、今や荒野のような静けさに包まれている。


「殿下、右へ!」

 私の声に反応して、ラゴス殿下が軽やかに剣を構え、フェゴールの突進を受け流す。

 重い衝撃音が響き、床石がひび割れた。


「……っ、すみません! また壊してしまった!」

「謝らなくてよろしいですわ! 壊されるより壊す方がましです!」


 金色の魔力が広間を走る。私は両手を合わせ、空気中の魔力を編み上げた。

 「封縛陣ミリュート・リース!」

 青白い魔法陣が床に広がり、鎖のような光がフェゴールの脚を縫いとめる。


 ――けれど、すぐに砕け散った。


「やはり、墓守りの封印では足りませんのね……!」

「ポムパンドラ嬢、後ろに!」

 殿下の声が鋭く飛ぶ。次の瞬間、フェゴールの尾が大理石を砕きながら薙ぎ払った。

 ラゴス殿下はその勢いを利用し、踏み込みと同時に斬り上げる。

 光の軌跡が宙に舞い、魔獣の頬をかすめた。


 「殿下、見事です!」

 「いえ、まだ浅い……! だが、動きが鈍った!」


 フェゴールの咆哮が大広間を震わせ、体から黒い靄が溢れ出す。

 それは“魂を喰らう瘴気”。長く浴びれば、心を蝕む。

 私はとっさに両手を掲げた。

 「浄光壁リュシス・ヴェール!」

 白い光が広間を包み、殿下の姿を照らす。


 「ありがとう、助かりました!」

 「お互い様ですわ!」


 ラゴス殿下の剣に光が宿る。

 光の刃が、フェゴールの瞳をまっすぐ射抜いた。


「これ以上、民を脅かすことは許さん……!」

 殿下の一閃が走る。


 フェゴールの咆哮が止まった。

 けれど、今度は静かな呻きが広間に満ちる。

 フェゴールの傷口から影が立ち上り、無数の手が殿下に伸びる。


「殿下――っ!」

 私は地面に魔法陣を展開した。

 「封界式・鎮霊連環トゥリニア・ノエス!」

 無数の光の輪が重なり、影の手を絡め取る。


 フェゴールが苦しげに身をよじった。

 その巨体が、崩れ落ちるように膝をつく。

 私は額の汗を拭い、静かに目を閉じる。


「……今です、殿下」

 ラゴス殿下は頷き、最後の一歩を踏み込んだ。

 「――王命において、安らかに眠れ!」

 剣が閃き、フェゴールの額に刻まれた古代の印章を貫く。


 光が爆ぜた。

 夜空に散るような輝きが大広間を満たし、黒い靄が音もなく消えていく。


 ――そして、静寂。


 崩れ落ちたフェゴールの身体は、灰のように淡く溶けていった。

 その場に残ったのは、わずかに残る冷たい風と、焦げた匂いだけだった。


 ラゴス殿下は剣を下ろし、膝をつく。

 私は彼の隣に駆け寄り、そっと手を差し出した。


「お疲れさまでした、殿下。これで……王都は救われましたわ」

「……申し訳ない、また貴女に危険を背負わせてしまいました。」

「危険というより、少々の筋肉痛程度ですわ。明日には治ります」


 彼が弱々しく笑う。

 私はその笑みを見て、ようやく胸を撫で下ろした。


 大広間に差し込む光が、二人の影を長く伸ばしていく。

 その光の中、フェゴールが消えた場所に、よく見るとひとつの小さな“箱”が残されていた。


 それは――封印の残滓か、あるいは次なる災厄の鍵か。


 私は手を伸ばしかけて、そっと止めた。

「殿下。……これ、開けない方がよさそうですわね」

「ええ。厳重な管理下に置くとしましょう。」


 穏やかな笑みの中、再び風が吹き抜ける。

 けれどその風の向こうでは、誰かが微笑んでいた。

 黒衣の影が、遠くの塔からその光景を見下ろし、薄く呟く。


「まだ終わらない……」


 こうして、王都を救った“のんびり令嬢と謝罪王子”の戦いは幕を閉じた。

 だが、次の箱の蓋が開いた音は、誰にも――聞こえてはいなかった。


――第2話へ続く。

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