記憶
死者が去って行った。
俺は歩く事も出来ずその場で崩れ落ち、回復薬を飲み一息着くと直ぐに歩き出す。
ここに武器も無しでいたら命がない。
魔物の住処を出て近くの村に着いた。
助かった、俺は生きて帰って来たと自然と涙が込み上げる。
「酒と飯をくれ」
俺は酒場で腹を満たした。
ここは村の筈だがやけに人が多く話を聞いていると、この村は先の戦いでトレント共に敗北した兵士達が大勢いるみたいだ。
帝国軍を解雇されてこの村で静かに暮らしているらしい。
そして相席している奴等に話掛けられた。
「あんたはこんな所に何しに来たんだ?」
「魔物の住処に行って来た」
突然、相席の周りが静かになり笑顔だった奴等が真剣な顔をして話し出した。
俺たちは国を侵略する為に魔物住処に入った。
それが正義だと、この世界にとって正義だと思っていた。
私達は力及ばず敗北したが、私達の命の変わりに正義を貫けるなら本望だと。
だが魔物の住処に行った全員が生きて帰って来た。
魔物に慈悲を与えられたのだ
私達は涙を流し命ある事を喜んだが、もし逆の立場なら私達は全員の命を奪っていたかも知れない。
そう思うと、もう戦う気持ちも無くなってしまった。
私達がするべきは正義でなく、どう生きるのが幸せかという事だけだ。
命を奪ってまで正義を貫く事では無かった。
「その通りだな」
「もしかしてあんたも魔物の慈悲を?」
「ああ、俺が生きて帰れた訳だ、あの不気味な声も死者も慈悲だったんだな」
「不気味な声は私達も聞いたが死者とは?」
「空を飛んで助けに来てくれた」
「空を?」
「とんでもなく強かった、一瞬でトレント共を撃退したんだ」
「あのとんでもなく強いトレントを?」
「S級の俺でも敵わねぇと思ったぜ」
「あんたS級冒険者だったのか」
さて、これからどうするか。
俺はまだ剣を置くつもりもねぇしな。
「剣を見せてもらうぞ」
どれもこれもがらくたばかりで、あの剣とまではいかないがトレントの枝を斬れねぇと話しにならねぇ。
「一番斬れる物はどれだ?」
「これだ、帝都でも最高峰だ」
試し斬りしてもいいか?
「これで斬れない物はないぞ」
きーん!
「全然駄目だ」
「そんな!その木はなんだ!ミスリルでさえ斬る事が出来る剣なんだぞ!」
帝都の武器屋は全滅か、後は鍛冶屋か。
「その木で剣を作れだと?ここは鍛冶屋だ木工職人に依頼しな」
俺は木を炉に投げ入れた。
「てめぇ何しやがる!木なんざ直ぐ燃えてなくなるぞ」
「よく見やがれ」
鍛冶職人は信じられないといった顔をしていた。
帝都の鍛冶屋も全滅か、可能性があるのはドワーフ国の魔導高炉だけだろうという話だった。
遠いが行く価値はあるな。




