職人
僕と炭職人はソリを引いていた。
「うちの炉じゃ駄目だな、ドワーフ国の魔導高炉なら何とかなるかも知れない」
炭職人は当てはあると言って、再びソリが止まり再び建物に入る。
「ああ?久し振りだな、どうしたんだ?」
「大先生、ご無沙汰しています。この薪を炭にして欲しくて伺いました」
「これか?」
「はい」
「これは魔導高炉でも無理だな」
「そんな!大先生でも無理だなんて」
「いや、俺なら何とかなる」
大先生は錬金魔法を発動させる。
「出来たぞ」
「おお!流石は大先生です、この色とこの艶、まさに炭でございます」
炭職人は炭を炭で叩く。
きぃぃん!
「素晴らしい音色です、薪の時より硬度が増したようです。大先生のお陰です、ありがとうございました。ほら、ちびも」
「ありがとうございました」
再びソリを引くと再びソリが止まる。
やっと炭職人の家に戻って来た。
炭職人は笑顔で、ふんふんふーんと鼻歌まで聞こえてきた。
それもその筈だ、家に帰る途中で食料を買い込み、この炭を使って肉を焼くのだという。
「ちび、これは依頼の報酬だ」
「ありがとうございます」
僕は依頼を終えてソリを引いた。
「ちび、何処に行く!肉を食ってからでも遅くはないだろ?」
「はい!」
僕と炭職人は肉や野菜の下処理をし、小さな炉に炭を入れ上に網を載せる。
「やっぱり肉は炭だよな!それも網焼きだよな!」
「はい、炭の網焼きです!」
僕は炭も網焼きも食べたことがないが、炭職人の話だと炭の赤い波動が鉄の網で焼く事によって、効率的に肉に伝わり美味しく焼けるという。
じゅうー
「いい音、いい匂い、たまらんねー」
炭職人が焼いてくれた肉を食べると、肉から溢れ出す汁、炭の匂いや味が肉に染み渡っている。
「うまい!」
「ちび、野菜も美味いぞ」
いつも食べてる野菜だけど焼き色が付いていて甘い。
「うまい!」
僕と炭職人は炭で肉や野菜を堪能した。
「最後はこいつだ、食べみろ」
「これは?甘い!」
これはさつま芋といって、熱を加えるとお菓子のように甘くなる芋だという。
「これは商品登録したんですか?」
「何言ってんだ、芋を焼いただけだぞ?」
炭職人に言われて思わず笑ってしまった。
「そうですよね」
「おかしな奴だな」
肉と野菜とさつま芋を綺麗に食べ終えて片付けをしていた。
よく見ると小さな炉で赤い波動を出している炭は、最初に入れた炭職人が作った炭だ。
トレントの枝から作った炭は波動どころか赤くもなく真っ黒なままだった。
それでも炭職人が作った炭で食べた肉や野菜はとても美味しい。
小さな炉と鉄の網と炭があれば家でも出来ると思うと欲しくて堪らなくなった。
そして僕は軽くなったソリを引いた。




