材料
「うーん」
眩しくて起きると布団から出て居間に向かう。
「おはよう」と僕は挨拶をすると「「おはよう」」と挨拶が返ってきた。
ジャンとランは既に起きていて、朝食の準備を始めて僕も顔を洗って朝食の準備を始めた。
「みんな今日は早起きだね」
「お菓子が作れると思ったら早く目が覚めちゃった」
「俺も何故か早く起きちゃったぜ」
そんな事を話しながら院長先生が作った朝食を机に運んで行き朝食が始まると「今日は焼き菓子を作る為の材料を皆で買いに行きます」と院長先生から話があった。
孤児院では加護やスキルを覚えると仕事をする時に有利になる事がある為、能力を伸ばす支援をしてくれるが大人になったら此処を出ていかなければならない。
いつもは院長先生と誰か一人が付いて買い物をするが、朝食を食べ終え皆で歩いてお店に行く。
買ってきたドーナツ、正確に言うとドーナツに付いていた白い粉でランの加護を解放する事が出来たので、僕も一緒に行ける事になったからだ。
院長先生は良い物が見つかるかもしれないと言っていたが、ジャンはおまけで付いて来るようで皆で買い物に行くのは初めてだから、それだけでわくわくする。
店の名前はシュガー。
お菓子を作る為の店らしく中に入ると調理器具や材料が沢山売られていて、院長先生とランは材料を探しに僕とジャンは店を見て回った。
これなんだろ?あれなんだろ?と、うろちょろする。
ここは通路が狭くお客さんも大勢いるので、背を向けて横歩きして慎重に通り抜けようとするも、お尻を押されて正面にあった白い粉の中に顔を突っ込んだ。
何が起った?息が出来ない口にも鼻にも白い粉が詰まってしまい取り敢えず口の中の粉を吐き出した。
「ぺっ!ぺっ!」すると正気を取り戻し自然と体が動く。
右の鼻の穴を右の人差し指で押さえて「ふん!」
左の鼻の穴を左の人差し指で押さえて「ふん!」
以前、経験した事があるかのように冷静に切り抜ける事が出来た。
これが本能というやつなのかもしれない。
「デコお前何してんだよ」と近くにいたジャンの笑い声が聞こえてくる。
「違うんだ急にお尻を押されて…」
「幾ら白い粉が好きだからって顔面から突っ込むなよな。ぷぷぷっ苦しい息が出来ない。お前な、限度ってやつを知らないのか!ぷぷぷっ」
駄目だジャンを止められない遊びのスキルを発動したかのように笑っている。
騒ぎを聞きつけて院長先生とランが来てくれた。
二人は真っ白な顔の僕を見た瞬間、固まってしまったが申し訳ありませんと頭を下げていた。
ランに耳打ちしようと近付くと露骨に嫌な顔をされてしまったが、どうしても聞かなければならない事がある。
「僕の顔に付いている白い粉は、どうやら片栗粉と言うらしいけどラングドシャの材料じゃないよね?」と耳打ちしたら、すぱーん!と叩かれてしまった。
僕の話を聞き耳していたジャンが、片栗粉でお菓子作ってとランに耳打ちした刹那に頭を、すぱーん!と叩かれていた。
後にランに聞いたらラングドシャの材料は小麦粉という名前であった。