贈り物
僕の贈り物はお腹いっぱいで食べられないかもしれない。
もっと早く渡すべきだったと後悔する。
僕が浮かない顔をしていると女の子が「どうしたの?」と尋ねて来た。
「誕生日のお祝いに贈り物を渡そうと思って」
僕は箱に入った贈り物を手渡すと嬉しそうに「ありがとう!開けてもいい?」と聞いてきたので「いいよ」と応えた。
女の子は箱を開けると、きょとんとしていた。
「これはドーナツと言う食べ物なんだ。もういっぱいで食べられないよね?ごめん、もっと早く渡せば良かった」
僕の声が聞こえているのか分からないくらい女の子は箱の中を見詰めている。
女の子は恐る恐る箱の中のドーナツを手に取ると口の中に入れた。
「あまーーーーーーーい!しあわせー」
僕は女の子の幸せそうな顔を眺めていた。
これが幸せな味か!と思った瞬間ドーナツも笑顔も消えていた。
え?おかしい、なにか変だ。まだ一口しか食べてないのにドーナツが無い。
「デコ!ありがとう!美味しかったわ。まだまだいっぱい食べたい、とっても美味しかったわ」
僕は女の子の笑顔をずっと見ていて片時も目を離してないのにドーナツが無くなっていて、気付かない瞬間に食べ終えてしまったのか?そんな、あり得ない。
「お腹いっぱい、もう食べられない」って言ってたのに。
どうなっているんだ?ドーナツの呪いか?そんな事を考えていると女の子は、またきょとんとしていた。
「デコ!私!加護が解放されたわ!」
「えーー!」
「しかも、お菓子は別腹(刹那)ってスキルも覚えたわ![お菓子を幾らでも一瞬で食べる事が出来る]スキルみたい」
「えーーー!」
恐い恐い恐い!なんだ、そのぶっ壊れたスキルは…間近で見た僕だから分かる…化け物だ。
「あとラングドシャって言うのも覚えたわ」
「あははは、なら今からラング」
ドシャ!何が起きた?部屋の壁に叩きつけられたようで、ほっぺたも痛い。
「あははは、デコは駄目だな!そんな名前付けたら怒るだろ。女の子にラング」
ドシャ!どうやらジャンも壁に叩きつけられたようで、ラングは男の子の名前らしい。
「二人共!よく聞いて!今から私の名前はランよ!間違えないでね」
僕達は「ラン…これからも…よろしく…」と言って意識が遠くなる。
ランは二人に近づき「デコ、ジャンありがとう。これからもよろしくね」と微笑んだ。
「あらあらあら、まあまあまあ。デコとジャンを布団まで運びますよ」
「はい!院長先生」
こうしてランのお誕生日会は終わったのだった。