個人戦
夏季お菓子大会当日になり、ジャンとランは気合いが入っていた。
特に前回のお菓子大会で出場する事が出来なかったジャンの意気込みが強く、僕も手に力が入る。
大会委員から観戦に来ている者達に様々なお菓子を振る舞えるよう、団体戦の他に個人戦が追加されたのだ。
それぞれの個性を生かしてお菓子の魅力を広げる事が出来れば、より関心が高まるだろう。
個人戦は観戦者達の投票で決まり、お菓子の美味しさや試食の量、更には実演で惹き付ける事で投票して貰える可能性もある。
出場する者達を倒し、尚且つジャンとランも倒さなければいけない危険な大会になった。
僕は個人戦の事で頭がいっぱいになり気付いたら団体戦が終わっていて、満票で孤児院のアイスが優勝を飾っていた。
嬉しいが本当の戦いはこれからだとジャンとランに闘志を向けて立ち去る。
大勢の者達が出場する場所を決める抽選が行われ、運が悪ければアスレチックパークの隅の方に追い遣られてしまうだろう。
そして抽選の結果、見事に特別席を引き当て指定の場所に向かうと、外周の席に囲まれた一番目立つ中央の席が待っていた。
運も味方に付け、女神様も僕に勝って欲しいと願っているに違いない。
個人戦が開始され観戦者達が押し寄せると、お菓子作りを開始する。
お父さんに頼んで個人戦用の保存が出来る箱を作って貰い、予め大量のアイスを作っていて後は仕上げをするだけの状態だ。
僕が創意工夫した結果、桜餅に糸口を見つけ中身をあんこでは無くアイスにしたお菓子を作った。
桜餅アイスは、もちもち感と冷たさが融合したお菓子で、手で掴んでもアイスが溶けることが無く食べやすい。
実演の方もアイスを餅で包むだけだが見映えは良いと思うし、短時間で大量に作れるのも利点だ。
僕の場所に観戦者が集まり出し、次々に桜餅アイスを提供していくと「美味しい」「投票する」等の声が聞こえて来て評判は上々。
しかし、暫くすると異変が起こり僕の前には誰も居なくなり、何が起こっているんだと周りを見渡すと観戦者達は皆、見覚えのある物を手にしている。
それは僕が遊び心で作っている物にそっくりで、僕の専売特許だと思っていた。
僕は居ても立ってもいられず、そのお菓子を作っている者の元に向かうと驚愕な実演が行われていた。
「一つ下さい」と声を掛け僕の為に作ってくれたお菓子を手渡され、この色、この照り、この形と一口食べてこの滑らかさ。
仕舞にはアイスが載せられた容器まで食べられ手が汚れることも無く、まさに完璧なお菓子だった。




