同族
ドワーフ王国を脱出し帝都を過ぎて、噂の魔物の住処に辿り着き、進んで行くと建物が見えて来る。
帝国軍や我が国の精鋭部隊を撃退した話を聞いていたが、そんな魔境には感じなかった。
それにしても魔物の住処に立派な施設が建ち並んでいるが、大丈夫なのだろうか?
「まずはアスレチックパークで宿を取り食事をしましょう」
「あぁ…」
建物の中に入ると従業員が出迎えて来るが、ちびを見るなり頭を下げ立ち去って行く。
ちびは魔物の住処をアスレチックパークと称して、命と引き換えに仕事が無い者を働かせているようだが…
宿に案内され荷物を置いて食堂に案内されると、大勢の者達が食事をしている。
「好きな物を注文して下さい」
「ステーキを頼もう」
ちびが肉焼きの時にステーキと言っていたのを思い出し注文するが、家族は国の郷土料理を頼んでいた。
同族が働いているのか?と思った矢先に「仲間が居るじゃねぇか」と野太い声が聞こえた。
「あんたは鍛冶職人の…」
「今じゃただの木こりだ」
失踪した鍛冶職人が魔物の住処で木こりをしてるだと!
「お知り合いですか?」
「同じ鍛冶職人だ」
「では後はお任せしても宜しいですか?」
「任せろ!ここで働くんだろ?」
ちびと親父は何処かに行ってしまい、既にここで働く事になっているようだが大丈夫だろうかと不安になる。
失踪した鍛冶職人は、まずは腹ごしらえだと隣に座り、同じステーキを注文する。
「今日の料理当番は俺の家族だ」
「家族もここで働いてるのか?」
「料理の腕には自信があるから楽しみにしてろ」
「あぁ。楽しみだ」
まずは郷土料理が出て来て、家族から一口貰うと思わず唸ってしまう美味さだ。
俺の家族もここで働けば美味い料理が作れるかも知れない。
次はステーキが出て来たのだが、厚切りの肉が何枚も重なり合っていて食べ切れるかと思ったが、口に入れると溶けるように無くなってしまった。
「美味すぎるぞ!」
「だろ?だがもっと美味いお菓子がある」
正直、甘い物は酒に合わない事も有り余り好きでは無いのだが…出て来たお菓子に絶句する。
「これは…」
「お前の想像通りのあれだ」
魔物の住処で魔境と言われている由縁はこれなのか?
「これが魔のお菓子」
「そうだ!ちびが遊びで作った本物だ」
あの親子は魔物の住処の住人で魔人だったのだ。
黒光りして渦を巻いている本物を食べると魔人に成るのだろう。
ここで生きる為には魔人に成るしか無いのかと家族の方を見ると、本物を口にいれ笑顔を浮かべている。
俺も後を追うように口に入れて噛み砕くと、かりっと音がしてあれの中から俺の大好きな酒と目から涙が流れ出て来た。




