牢獄
鉄格子の付いた部屋に入れられると大会本戦に出場した筈の親父が鎮座していた。
どうやら職人でも木こりと鍛冶では無理があったらしく、実技で鉄を金槌では無く剣で叩いたら牢獄に入れられたという。
金槌を持たない鍛冶職人など居ないし、金槌を使う木こりもまた居ないという事だ。
親父と別れる際に親方の所に居ると伝えて、大会が終わったら迎えに来る筈だったのに…
雪舟達は親方の家族と買い物に出掛けていたので捕まる事は無かったが大丈夫だろうか?
親父は噂で優秀な職人を集めて武器を作らせ、何処かの国を侵略するつもりかも知れないと聞いたという。
だから親方は武器以外の僕の作品を不合格にしたのかも知れない。
問題はどうやってここを脱出するかで親父の剣は投獄される時に没収されてしまい、脱出する術は無く時が過ぎるのをただ待つだけであった。
ちびが連れ去られた後、兵士が去り際にこの剣を鑑定しろと剣を受け取り、この剣はちびの親父が持っていた木剣だと直に気付いた。
何故、木の剣を鑑定するのかと軽く木剣を振ると何かがおかしい。
今迄、剣を作るのに何万回もの剣を振ってきたが、この木剣は軽すぎる。
ただ軽いだけじゃなく何の抵抗も感じなく空気を斬り裂いているようで、木剣を試験用の鋼鉄の鎧に当てると紙切れのように斬れてしまった。
ちびが武器を作る気にならないと言ったのは既にとんでもない剣を作ってしまったからだとぞっとする。
家族が買い物から帰って来ると雪舟という名の変な生き物に、この剣と手紙を親父とちびに渡して欲しいと依頼した。
数日の付き合いだが雪舟は言葉を理解し依頼を完遂出来る力があると思っている。
そして俺は家族と共にこの国を去る決意を固めた。
薄暗い牢獄に誰かが近付いてくる気配を感じ、雪舟が助けに来てくれたと思っていたが兵士だと気付き落胆する。
出ろと言われて連れて来られたのは怪しげな部屋で鞭打ちの刑を執行するという。
仮面を付けた者が鞭をしならせながらお前達は何者だと問い掛けられデコと答えるも、デコとは何者だと鞭を振るって来た。
ばんばん!と僕の身体を打ち付けると一瞬で牢獄に戻り、雪舟が僕をばんばん!叩いている。
牢獄で見た夢は図書室で読んだ物語の尋問の場面を体験したような気分になり、これからは読む本を選ばないと悪夢にうなされる日がまた来るだろう。
ソリに乗り丸くくり抜かれた鉄格子から脱出すると出入り口の門の前に辿り着き、隠れて待っていた親方家族と合流した。




