深い森の村
次の日は冒険者組合長の弟に会いに行く為、早朝から出発すると口笛で魔鳥を呼び出し案内してもらう手筈になっている。
ぴー「ぴよぴよ」
深い森の中をソリで滑走し小さな村に着いた。
森に囲まれ近付く者を拒む村と聞いていた通り、村人が僕達に気付くと驚いて警戒するが魔鳥がぴよぴよ鳴くと警戒を解く。
「おはようございます」
「どのようなご要件でしょうか?」
「冒険者組合長に頼まれて弟さんの玉露を頂きに来ました」
「この村の宝の玉露を?」
村の者達と話をしていると雪舟の姿は消えていたが、先ずは村長の家に案内される。
「玉露は村の宝で娘といえど、やすやすと渡せるものでは無い。欲しければ自分で取りに来なさいと伝えて欲しい」
長年にわたり村に帰って来ない娘に会いたいという親心が滲み出ている。
お茶でも飲みなさいと言われ、出て来たお茶を飲むとお菓子が食べたくなる。
「お茶に合う僕の作ったお菓子が有るのですが食べませんか?」
「この玉露に合うお菓子ですか」
村長夫妻はお茶に合うお菓子と聞いて抹茶チョコレートラングドシャを机に広げると興味津々に覗き込む。
「この緑色の物は何だね?」
「抹茶と言ってお茶の葉を凝縮した物を混ぜたチョコレートの焼き菓子です」
「お茶の葉を凝縮とはな。しかし玉露には勝てまい」
「食べてみて下さい」
村長夫妻は好奇心も相まって直に手を伸ばし口に入れると表情が真っ青になる。
「我らの玉露より濃厚な味わいだ。まるで神森の恵みのようだ」
「貴方様は神の使者でございますか?」
「とんでもないです。このお菓子は僕が作りましたが、抹茶は息子さんが作ったんですよ?」
「息子が抹茶を作った?」
「直に息子を呼んで来ます」
真っ青から真っ赤な顔になり待つ事いくばくか、息子を連れて村長夫人が戻って来た。
「お客様から頂いたお菓子だ。美味しいから食べてみなさい」
「その為に呼んだのか?お菓子に興味は無い」
「いいから食べてみなさい」
「うおっ!抹茶の味がする」
息子は慌てて口を塞ぐが手遅れのようで、親の尋問で全てが明るみになると村長からお礼の品だと玉露を分けて貰った。
村で一日を過ごし、次はいよいよドワーフ王国に向けて出発する。
やっと解放された…
あの親子は姉さんが送り込んだ刺客で玉露なら良いが抹茶まで搾取されては、たまったものではない。
以前に冒険者の刺客で抹茶を奪われたのを機に、魔鳥に感知されないように強力な魔法を施す事に成功した。
これで安心して寝られると抹茶を隠して有る部屋に行くと何者かが扉を開けた形跡がある。
この部屋に入るには私以上の魔力を保有している者しか入れない筈なのにと思った瞬間、何者かが居る事に気付く。
何処で見たことが有る、あのきらきらした瞳と黒い魔物。
何故、私の隠し部屋にあいつが居るのだと思った瞬間思い出す。
あの子供、何処で見たと思ったら魔物の住処の住人で、姉さんは禁断の契約を結んでしまったんだ。
そして、隠し部屋にあった抹茶はひと粉も残っておらず、魔物達も姿を消していた。




