実技試験
受付嬢は見習い冒険者でも実技で実力を認められると帝国での仮の冒険者証明書を発行してくれると言う。
だが僕のスキルや魔法は皆から止められていて緊急時以外に使う事が出来ない。
今の僕に出来るのは料理くらいなのでどうしたらいいのかと悩んでいたが、きらきらとした瞳が目に入る。
前に図書室で読んだ本には冒険者が魔物を従えて戦う者を魔物使いと言い、自身に力が無くても戦える職だと書いてあった。
それならば実力として認められる筈と試験に挑む事にした。
冒険者組合に併設されている訓練所で冒険者実技試験を行うのだが、その場にいた冒険者達はその試験を観戦しようと集まっている。
今回の試験官は帝都でも鬼教官として悪名高い元冒険者で一回目の実技試験は必ず落とす事で有名との事だ。
「おっさんじゃ無理だな」
「装備からして冒険者と言うより、あれじゃ木こりだな」
冒険者達から笑い声が聞こえ木剣を持ってる親父の今の仕事は木こりなので観察眼が鋭い。
一対一の試合が始まったが両者は全く動こうとしないので痺れを切らした試験官が間合いを詰めると手に持っていた剣が床に落ちる。
「ちび!何もして無いのに何故剣が落ちたんだ?」
「え?親父が剣で叩き落としたんですよ」
「なんてこった。全然見えなかった」
「仕事で鍛えてますからね」
親父は剣を試験官の喉元で止めると試験は終了した。
次は僕の番で、魔物使いという設定で雪舟が引くソリに乗っていると又もや冒険者達から笑いが起こる。
「ちび!試験官をぶっ飛ばしてやれ」
「ちび!今の試験官なら楽勝だぞ」
冒険者達が煽ったせいで試験官は武器を捨てて身体強化魔法を発動させる。
「俺がちびの攻撃を受けきったら俺の勝ち、俺が受けきれなかったら俺の負けだ」
「分かりました。よろしくお願いします」
試験が始まると雪舟もソリに乗り込み魔力を流す。
ちゅどーん!
俺は帝都の冒険者組合で主に試験官として働いている。
前は冒険者として帝都近郊のダンジョンでモンスターを倒し生計を立てていたが突然変異のミノタウロスにやられて以来、冒険者を引退する事した。
俺が生きて帰れたのは身体強化魔法が他の者より強力で、吹き飛ばされずに済んだから隙間を突いて逃げられたが、そのまま戦っても勝てないと悟ってしまった。
だから冒険者実技試験では挫折させて、それでも戦えるという者だけが冒険者に相応しいと思っている。
そして、おっさんと子供にも敗北という試練を与えるのが俺の仕事なのだ。




