苺畑
辺境の街の苺は実が大きく甘さと酸っぱさの均衡が取れていて、お菓子に使われた事で爆発的に知れ渡ると今や辺境の街の名産品になり、王都では危険を冒してまで苺を買い付ける商人もいる。
その苺畑にやって来たが、これから温かくなる季節を前にしてあろう事か苺が実っていて急に誰かに見られている気配を感じ周りを見渡すが誰もいない。
実を手に載せて確認すると間違いなく苺で夏苺と言うべき物かと思考していると、背筋が凍る程の気配を至近距離で感じ命の危険を感じる。
絶対に誰かいる絶対に近くにいると感じていたら苺を載せた手の隙間から気配を感じ咄嗟に苺を離し確認するが誰も居ないく、まだ見られてはいるが背筋が凍る程の気配は無くなった。
もしかしてこの苺畑には苺を盗もうとする者を監視する何かが有るのだろうか?
取り敢えず苺畑の管理者を尋ねると、この苺農園では何時でも美味しい苺を食べる事が出来ると言われ、今から苺狩りをしませんか?と提案される。
先程、命の危険が有る程の気配を感じた事を話すと苺の徽章を渡され、これを身に着けると大丈夫だと言う。
真相を確かめる為に同じ場所で苺を手に載せるが背筋が凍る程の気配は感じ無いものの、やはり誰かに見られている。
いや、苺畑の影から虫の様な何かにじーっと直視されていて、あの恐ろしい気配はこの虫の様な何かの仕業なのか。
それとも、「苺好きのただの虫か?」
虫は苺をもぎ取り懐にしまっている所を見ると、やはりただの苺好きの虫の様だ。
私も負けじと苺狩りをするが苺好きの虫の苺を採る速さが尋常じゃなく一粒も採れない。
私は猛然と走り出し苺を目掛け頭から突っ込むも全て苺好きの虫に採られてしまうと聞き覚えが有る声が聞こえる。
「お兄様…」
どうやら視察に来ていた妹に再会したが、土まみれでかっこ悪い姿を露見したようで妹の目が冷たい。
苺好きの虫に邪魔されて苺が採れないと妹に話しをすると妹はいとも容易く苺をむしり採る。
「馬鹿な!」
妹は苺採りの天才か!あの苺好きの虫のが居るにも関わらず苺を奪う事が出来るなんて…
結局、一粒の苺を採る事も出来ず私の初めての苺狩りが終了し、妹にもぎたて苺を一粒貰い一口で食べると甘酸っぱい苺が口に広がった。
側に居る苺好きの虫も懐から苺を取り出し噛りついていて、私にも苺を一粒分けて欲しいと声を掛けると渋々と苺を差し出してくれる。
この苺好きの虫は言葉が分かるらしいのでもう一粒苺を強請ると喋り出す。
「だめ」
言葉を理解し話す事が出来る虫とは、まるで魔物の住処に住む伝説の魔物を連想したが、だとしたら私は生きてはいないだろう。
こうして目的を達成し満足して王都に帰還する事になった。




