旅の宿
如何に最高の肉だとしてもこれ以上は無理だ。
「おかわりのシャトーブリアンてんこ盛りです」
「大将!おかわり等してないぞ!」
止めてくれー。
はあはあ。夢か…
それにしても酷い夢で肉でうなされるとは思わなかったが流石にあれは全て夢だったのだな。
考えてみれば夢でしかあり得ない事ばかり起こっていたからと自然と笑みが溢れたが何故か身体が重く、まるで肉をたらふく食べて動けなくなっているかのように…
宿の寝床から身体を起こして部屋を出ると従業員に声を掛けられ食事の用意が出来ていると言われるも、どうにも腹いっぱいの様だが飲み物も有るだろうと食堂に向かった。
食堂には大勢の者達が食事を楽しんでいて席に着くと献立表が置いて有り様々な料理名が書かれている。
兎に角、喉が渇いていたので飲み物を注文するが何が何だか分からないのでお茶を注文する事にした。
「お待たせ致しました。玉露でございます」
私が頼んだのはお茶だが見た目はお茶の様なので文句は言わず頂くことにした。
「美味い」
声を上げる程そのお茶はとても美味しく何か甘い物が食べたくなる。
妹がお菓子は別腹と言っていたのを思い出しお茶に合うお菓子を注文する事にした。
「お待たせ致しました。今日限定の桜餅でございます」
これは以前食べたわらび餅と違い桜色の餅に葉っぱを巻き付けた物の様で、葉っぱを取り除き食べようとすると横から怒鳴り声を掛けられる。
「てめぇ!正気か!」
お菓子を食べようとして正気を疑われたのは生まれて初めてだが、どうやら冒険者に難癖を付けられたようだ。
やはり一部の冒険者にはこういう輩が居るようで冒険者組合には教育を徹底してもらいたいものだな。
「表に出ようか」
冒険者一人くらい副団長が居なくとも相手に出来るが、ここで騒ぎを起こせば私もこういう輩だと思われるからな。
立ち上がろうとすると冒険者に先を制され椅子に座わらされると事態は思わぬ方に向かった。
「お前はこいつの食べ方を知らないらしいな」
何を言ってるんだ?もしかして新手の恐喝か?何で食べ方の説明を長々とされているのだ?
冒険者が言うにはこの葉っぱごと食えという事らしいが、この程度の嫌がらせなら甘んじて受けてやろう。
桜色の餅に葉っぱを巻き直し、ひと噛りすると口の中で桜が咲いたような感覚が沸き上がる。
私を見て冒険者も満足している表情で頷いていて、全て説明の通りだった。
軽い食事を済ませ副団長を探そうとすると冒険者達が不吉な会話をしているのを耳にした。




