成功
失敗は成功の始まり
人は努力する事で困難に立ち向かう事が出来る
それは加護の恩恵では無い
人が生きようとする本能だ
その努力が実を結ぶ時が来た
「おぉー!」
歓声の中心にいたのは屈強な剣士や魔法士達だ
彼等は死地に赴いたかのよう一際に異彩を放ち殺気をも纏わせお菓子作りをしていた
そのお菓子が完璧に完成したのだ
彼等は完璧な飴を高く掲げ勝利を確信していた
「頂きます!」
戦士達は歓喜する事無く只々涙を流していた
お菓子作りの才が無い生粋の戦士が完璧に完成させる事は不可能だと考えられていた
努力が不可能を可能にした瞬間だった
しかし人とは欲深い者だ
戦士の一人が口を開く
「もっと甘くしたい」
その一言で戦士達が動き出した
今迄の経験から自分達だけでは失敗すると知っている
先生に助言を求めさらなる欲求を満たそうと試みた
「ラン先生!甘くしたいです!」
先生は泣きながら訴える戦士達に助言を与える
「酢を入れて下さい」
すると戦士達は耳を疑うかのように狼狽えた
「酢だと?」
お菓子作りに才の無い戦士達も酢ぐらいは知っていたようだ
戦士達は追加で砂糖を入れる事を懇願すると先生は了承し砂糖を入れる時機を教えていた
新たにお菓子作りを開始すると完璧に仕上げ固まりきる前に先生からの合図で砂糖を投入する
へらという調理器具で混ぜて調理用耐熱手袋を着けて練り込んでいく
細長い棒状にしてそれを一口大に切っていく
上級の技術だがこの手の技は戦士達が得意するところだ
「出来たぞ!」
歓声が響き教室にいる生徒達は戦士達に拍手を贈っていた
大勢の生徒達が見守る中で戦士達は飴を掲げた
「頂きます!」
からん!からん!
飴は床に落ちて綺麗な音を奏でていた
「塩っぺぇ」
戦士達の悲鳴が響く
「先生!何で塩の味がするんだ!」
「それは貴方が塩を入れたからよ」
そう最後に練り込んだのは砂糖では無く塩だった
「ラン先生!何で教えてくれなかったんだ」
「塩飴は立派なお菓子だからよ」
創意工夫
意図しない事が新しいお菓子を生み出したのだ
甘いだけがお菓子では無い
だが甘党の戦士達にとっては塩辛い飴は困難な試練だろう
床に落ちた塩飴を拾い綺麗に水で洗うと口に入れ塩っぺぇと言いながら舐め続けた
「ラン先生!酢を入れたら甘くなりました」
「嘘をつくな!」
話を聞いていた戦士達は苛立っていた
そんな筈無いと大声を上げたが先生が作った酢入りの飴を舐め信じられないと呟いた
最初から先生を信じて酢を入れれば良かったのだ
戦士達は三度甘い飴を作った
今度こそ完璧だと酢飴を掲げる
「頂きます!」
戦士達は一斉に大声で叫んだ
「酢っぺぇ!」
水と間違え大量の酢を入れた末路だった




