あれ
誰でも簡単に出来る料理だと!
家族にそう言われて俺が作る事になった
あれを
家族は操作されている次元じゃない
これは洗脳だ
俺にあれを作れなんて言う筈がない
俺は操作されても直ぐに自分を取り戻す事が出来る精神力を持っている
操作が解けても並の者ならあれを美味しく食べたという事実が精神を崩壊させるだろう
俺はあれを克服したんだ
そして自分自身であれを作るとはな
これも克服したらもう一段高い極みに達するだろうな
そんな事を思いながらあれの料理が始まった
まずは板状になったかちかちのあれを細かく砕く
火に掛けた時に溶けやすくする為だ
砕いたあれを鍋に入れて火をつける
よもやあれを砕いて火に掛ける日がくるとはな
ぷーん
甘い匂いがする
操作だけでなく洗脳もされているという事だ
見立てが甘かった
最初から俺と家族は操作され洗脳されていたんだ
ここで家族から選択を迫られた
あれにブランデーを入れるか否か
俺や家族は強い酒が大好きだ
あれを食べた後にブランデーを呑めば紛らわせる事も出来るがあれに混ぜてしまってはお終いだ
入れない選択をしたが家族が勝手に入れてしまった
なんてこった
洗脳されても酒好きは変わらないか
ブランデーが入ったあれを焦げないようにかき混ぜた
次はあれに付ける食材を調理する
芋やらパンやらを一口の大きさにして串に刺す
それをあれが入った鍋に入れあれをたっぷり絡ませる
後はあれが固まったら完成だ
と思ったが家族に指摘されてしまった
今食べろと
なんて恐ろしい事を言うんだ
生のあれが付いた芋を食べろと言うのか
お腹を壊した時のあれじゃないか!
これは今迄に食べたあれより遥かに危険だ
無理だ
身体も精神も耐えられない
しかし家族はパンの刺さった串を取りあれをたっぷり絡ませてひょいと口に入れる
笑顔だ
家族は神の領域に踏み込んでしまった
生のあれを食べられるなんて
俺にあれを笑顔で食べられるのか
取り敢えず串を手に芋を突き刺す
恐怖のあまり手が震え何度も突き刺す
そして芋が穴だらけになったのを見かねた家族は串を刺し伸べた
芋が綺麗に突き刺さり笑顔であれをたっぷり絡ませる
「あーん」
悪魔の声が聞こえた
口を開けろと言う悪魔の声が
「あああああーん」
声が震えていた
家族はにっこり笑うと口の中に入れる
あれの苦さと甘さとブランデーと蒸し立ての芋が見事に調和している
これは生のあれでなければ味わえない究極にして至高の料理だ
笑顔が溢れた
もう思い残す事は無い
俺と家族はこれから神になるのだから




