お迎え
遅い!魔物の住処から街までは直ぐ近くと書いてあるのに…
私は手紙を握り締めて苛立ちを抑えきれずにいた。
魔物の住処の入口にはフルプレートアーマーの案山子が目印だと書かれていて、直ぐに魔鳥を飛ばしたというか勝手に飛んで行った。
全くなんて奴だ。
もしかしたら違う場所に飛んで行った可能性も有るかと思ったが、自力でここを越えられる気はしない。
辺りにはトレントも居ないし、気配を消して行けば越えられかもと思った時瞬間、何かが姿を見せた。
子供だ!変な生き物が荷台を引いていて、その荷台に子供が乗っている。
子供が変な生き物の餌になっていて、このまま放っておけば食べられてしまう状況になるだろう。
トレントには魔法が効かないが、あの変な生き物には魔法が効くかも知れない。
隙を突いて魔法を放ち荷台を奪い子供を救出するしか無い。
「ステルス」
私は気配を消し姿を隠す魔法を使い魔物の住処に入ると、変な生き物は魔物の住処の奥深くに入って行く。
後を追って行くとトレントが現れたが、私の魔法は魔物でも見つけられない筈なので、慎重に進んで行くとトレントの動きが私を追っている。
見破られたのか?トレントは枝で攻撃してきて、あまりの速さに体が反応出来なかった。
やられた!しかしトレントの枝が優しく私の懐を弄る。
何だ?このトレントは?私に気でもあるのか?
するとトレントは私の懐から短剣を取り出し見詰めると、興味が無くなったように短剣をぽい捨てして去って行った。
何だったんだ?私が視えていた訳では無いのか?
視線を戻すと変な生き物と子供を見失ってしまった。
子供を見捨てて来た道を戻るか?いや、トレントが私を認識出来ないのであれば進んでも問題ない筈だ。
私はぽい捨てされた短剣を懐にしまい奥深く進む事にした。
すると数体のトレント達に遭遇し、私が右に動くとトレント達も右に、私が左に動くとトレント達も左に…やはり視えている。
私は動きを止めるとトレント達が枝で一斉に攻撃してくるが、動いても躱せない。
私はトレント達に優しく弄ばれ、こちょこちょされると吹き出しそうになるが、ここで笑ったらトレント達に気付かれてしまう。
またしても短剣を奪われると、ぽい捨してトレント達は去って行く。
トレント達の狙いは短剣のようで、何故ステルスの掛かった短剣を見つけ出せるのか?何故見つけた短剣をぽい捨てするのか?
私は短剣を懐に仕舞うか、そのまま捨て置くかの選択を迫られている感じがした。
もう一度だけ、もう一度だけ懐に仕舞う選択をして短剣を拾おうとすると、黒い何かが転がって来たのだった。




