加護
この世界では生まれてくる全ての生命に加護が与えられ、その加護に相応しいスキルが発現し、この世界を生き抜く力となっている。
ある者は戦の加護、ある者は魔法の加護、ある者は料理の加護、ある者は…
「痛ってぇデコ!少しは加減しろ」
「ごめん!ジャン強過ぎた」
「笑いやがって次は手加減は無しだからな!」
「許してぇー」
僕の名前はデコ、孤児院で暮らしている。
名前が無い僕にジャンが名前を付けてくれた。
「何故デコなの?」と聞いてみるとデコピンが強いからと。
ジャンには真名があるが、ジャンケンが強いからと僕も勝手に名前を付けた。
遊びの加護が有り、今遊んでいたのがジャンケンとデコピン遊びだ。
ジャンケンとは拳を握った状態をグー、グーから人差し指と中指を開いた状態がチョキ、指を全部開い状態がパー。
そしてグーはチョキに強くチョキはパーに強くパーはグーに強い。
「ジャンケンぽん!」と掛け声をして一斉にグーかチョキかパーを出し、互いにグーとかチョキとかパーの場合は「あいこでしょ!」と言う掛け声と共にグーやチョキやパーを出す。
という感じの勝ち負けを決める遊びを加護の恩恵で覚えたのだ。
僕はその遊び方を聞いて「天才だ!」とジャンに抱き着いてしまったほどで、例え加護の恩恵だとしてもジャンでなければ覚えられなかっただろうと思っている。
さらにジャンケンに負けた罰としてデコピンなる遊びを覚えた。
人差し指の爪を指で押さえて人差し指を弾くように前に突き出し、その突き出した指を相手の額つまり、おでこにピンと弾く遊びだ。
僕は未だにデコピンの臨戦態勢を見るだけで血の気が引き、がたがたと震え出しそうになる。
デコピンを遊んだ者は知っている。決して嘘でない事を…
遊びの加護はジャンケンやデコピン等の遊びに強くなり、ジャン曰くジャンケンの必勝[最初はグー]というスキルを覚えたり出来るらしい。
そんなスキル「聞いてないよ」
そして最初にしなければならない事は加護の解放で、加護を解放するには条件を満たす必要がある。
条件は何なのか分からないけど手掛かりが記されており、ジャンの場合は加護が遊びで手掛かりが皆で遊ぶだったが、僕と友達になった瞬間に加護が解放された。
つまり解放条件は友達を作るだったのだ。
僕の加護は双子で手掛かりは兄が負けず嫌いで妹は可愛い。
僕が負けず嫌いの兄だとして、解放条件が可愛い妹だとしたら絶望的だ。
僕には両親も妹も居ないのだからと衝撃を受けつつも、ジャンと一緒に遊びを増やせて行けたら僕は…十分満足だ。