トランプ遊び
「さぁ、お前の選択だゾ。どちらが良いか選べ」
真剣な表情の魔王様。
固唾をのみ、ゆっくりと手を出すシュバルツ。そして、シュバルツは勢いよく魔王の手札を引いた。
「上がりだァーーーーっ! また魔王様の負けー!」
「なんでダ! なんでいつも私はこれで負けるのダ!」
魔王様を含めてトランプで盛り上がっていた。
あれから俺の体を治し、石化を解かせて詰められた。俺の説明もあり納得はしてくれたみたいだが怒られてしまった。
そして、次に魔王様が見たのはトランプ。トランプはこの世界になかったので目新しさもあったのかものすごく興味を持っている。
初代勇者とかもやれば開発はできたんだろうけど、多分その暇はなかったんだろうなと勝手に考えていた。
「魔王様、へきると同じで表情で丸わかり」
「少しは表情を貫く練習をしたらどうですか魔王様」
「むぐぅ……」
魔王様はポーカーフェイスが出来ず、ジョーカーをずっと見ててジョーカーに手をかけるとものすごく表情が変わる。
へきる自身はこういう駆け引きが苦手なのは自分で理解してるからこういう勝負はやらないんだけど、魔王様は初めてだから……。
「スピードやりたいねぇ」
「嫌だよ。勝てないし」
「……」
むしろ今までスピードやってへきるに勝てたためしがない。
動体視力、運動神経、反射神経においてすべて俺より上回ってるへきる。7並べやババ抜きといった駆け引き系はダメだがスピードは得意だ。
「じゃ、次は神経衰弱だね」
「なんだそれ」
「危ない技ですか?」
「いやいや、そういうのじゃないんだよ。トランプをこうシャッフルして裏返しで並べるんだ」
俺は神経衰弱のルールを説明して実際にやってみる。
「たとえばめくってそろったら自分の得点になるんだよ。で、そろったらもう一回二枚めくれる。で、そろわなかったらまた元に戻して次の人に交代。全部取り終わって一番特典が多かった人が勝ち」
「面白そうだねぇ」
「ふっふっふ。私には透視の魔法があるのだ。柄を見るのはたやすい」
「え、魔王様ずるくない?」
「はーっはっは! 恨むがよい! 能力なのだ!」
そう簡単にはいかないと思う。
透視の魔法。聞こえはいいけど……。
「あ、カードが透けてるから柄が分からなイ」
こうなると思った。
多分柄がわからないから意味ないと思っていた。だってそういう都合のよさそうな魔法はこの世界にはなさそうだしな。
透視は壁越しに敵などがいないか探知するためのもんだろ。壁に何が描かれてるかまではわからないでしょ普通は。
「あ、Aそろった」
カードがどんどん減っていく。
最終結果は俺とへきるの優勝、魔王様は一つもペアをそろえられずだった。
「なぜダ……」
「これは間違えた際、そこにあるカードを記憶しておくんですよ」
「場所は変わらないから違う場所にある同じ絵柄をめくったらそこひけるもんねぇ」
「最初は数が多いから大変だけど最後のほうは数少ないし大体記憶だよりになるよな」
「そうですねぇ。ほかの人の手番の時も重要ですね」
「だから神経を衰弱させるから神経衰弱なのか」
そういうわけじゃないと思うけど。
「でもトランプというのはなかなか面白いな。これ量産はできるカ? ぜひ魔王領に広めたイ」
「おー、いいんじゃないですか? 量産は紙にこれを書くだけなので可能だと思いますけど」
「よし! 作った職人を呼べ!たくさん作らせよウ!」
魔王様トランプを大層気に入ったようだった。
勇者襲撃以降疲れたような顔をしていたし、これでなんとか元気になってくれたらよいのだが。




