チンチロリン
今日はいろいろあって寝ようとしたとき。
なぜか眠れなかった。ストレス……? ストレスで眠れないのか俺は……。
「昨日の夜は夢語草でがっつり寝たとはいえもう眠気が襲ってきてもおかしくないはず……」
目をつむって数十分が経過したような気がするが一向に眠れる気配はなく、目がギンギンに冴えている。隣で寝ているへきるはもうすでに夢の中へランデブーしており心地よさそうによだれを垂らして眠っている。
しょうがない。少し散策でもしてくるか。歩いてるうちに眠気も来るだろ……。
俺は部屋から出て魔王城の外に向かう。
歩いていると明かりがついている部屋を見つけた。誰の部屋だろうか。こんな時間に明かりがついているってなんなんだ?
俺は興味本位でのぞき込む。
「……いいな?」
「おう」
「じゃ、この作戦だ……」
という不穏な会話。
なにかよからぬ作戦を立ててるのでは?と思っていると。
「待て、誰か覗いてる……」
「誰だ!」
扉が思い切り開かれた。
俺は苦笑いを浮かべてとりあえず謝ったが弱弱しい声を出していた気がする。
「客人か……。見られたからにはしょうがねえ」
「えっ、殺され……」
「お前もやってくかよ。魔鶏ダービー」
「ん?」
中を覗き込むと四羽の鶏のような魔物が餌を吊るされて走らされていた。
「え、なにこれ……」
「魔王軍で今やってる魔鶏ダービーっつう賭け事だ。お金をかけたりする賭け事だな。うるさくなるのと、魔王様が魔物で遊ぶなといってるから本来は禁止されてるんだけどよ」
「ほえー……」
ギャンブル……。
だからこっそりやってるのか。魔王も全面では禁止してないで止めてるだけだけどそれを言われるのがいやだからこんな夜遅くにやってるのかよ。
「俺もあんまり魔物で遊ばないほうがいいと思うけど」
「でもよー、賭け事でもしねえと緊迫感ねーんだよ」
「賭け事……。サイコロとお椀はある?」
「ん? ああ、あるぜ。サイコロはよく使うから常備しとるし、そういう食器なら厨房にいきゃああるんじゃねえかな」
「じゃあサイコロ三つとお椀用意して。新しいギャンブルを教えてあげる」
というので用意させて、俺はサイコロ三つを握りしめる。
「サイコロでなにするんだ?」
「サイコロをこのお椀の中に入れるの」
お椀の中にサイコロを放り込む。
出た目は4,5,5だった。一応役は完成した。
「こういうギャンブルが俺の世界にはあってね。チンチロリンっていうんだけど」
「ちんちろりん?」
「ルールは……」
ルールを説明すると、この場の人たちの顔がどんどん楽しそうという顔になっていく。根っからのギャンブラーかこいつらは。
そして、早速やり始めていた。俺も子として参加する。
「まずは俺が親だぜッ! どりゃ!」
「あ、ションベン」
「力込めすぎたーーーーっ!」
ションベンは無条件で負け。
親が交代する。今度は2,2,3という役が出たので子もサイコロを振るう。俺がまず振ると。
「出たアラシ! しかもピンゾロ!」
ピンゾロは5倍づけという設定にした。
無条件で勝ちで俺の配当が増える。
「くっそ……」
この調子でずっとチンチロリンをやっていた。
時間も刻々と過ぎていく。そして、窓から朝日が差し込んできた。
「人間もこういうの好きなんだな……。明日とかもやってっから気が向いたら来いよ」
「ああ……っていうか俺、あんたらの名前知らないけど」
「そうだな。俺は魔王軍所属、オークのシュバルツだ」
「俺はぁ、バジリスクのバジル。よろしくねぇ」
「ふふ、私は影蜘蛛のスキュラ。ギャンブラーとしてよろしく頼むよ……」
シュバルツにバジルにスキュラ。覚えた。
「明日も来るよ。俺もギャンブル好きだし」
「おう。待ってるぜ。あ、これは魔王様に秘密な。魔王様はいい顔しねえから」
「わかった」
秘密の集会だな。そういうの大好き。




