裏切りの小野瀬
小野瀬はまじまじと俺を見る。
「日和くんが女の子に……。しかもこんな私好みのロリに……」
「好きでなったんじゃねえよ……。っていうか、なんで抱き着いてんの?」
「だって女の子だもん」
「理由になってない」
小野瀬は俺にぎゅーっと抱き着いてきていた。
なんだろう、女の子の温かみを感じる。隣ではへきるがじーっと俺を見ているような気もするが、元男子高校生だった俺は女の子に抱き着かれている今の状況は不思議と嫌いじゃないというか。
夢で男に戻った感覚もあったのでちょっとばかし嬉しいといいますか。
「へへっ、魔王様。私、日和くんといたいので寝返りましょうか?」
「お前とんでもないこと言ってるな」
「だってぇ……。帝国のやつら今考えると相当クソなんだもん」
「えぇ……」
「異世界でチートもらった反動が故かめちゃくちゃ気分高まってたけど、いざ自分の頭で考えてみるとあれはないわってなっちゃってえ。で、私だけ牢に捕縛されないで自由に過ごしてるじゃん? 戻ってもクラスのみんなから嫌な目を向けられそうでねえ。特に伊地知」
「それはたしかにな」
伊地知はクラスメイトのリーダーのような立ち振る舞いをしていた。きっと先導者は伊地知なんだろう。伊地知がいけると指示をしてるから来たのかもしれない。
伊地知は性格クソだから小野瀬だけこういう思いをしてるのは気に食わないのかも。小野瀬は小野瀬でもう魔王軍に従軍するというような素直な姿勢を見せすぎているから逆に魔王が信用してないが。
「今の状況! 私が取るべきはどっちなのかと悩んだらさ……。やっぱ私ら呼び寄せてほかの国潰させるっておかしくね?」
「それはそう」
「第一……こんな頼る人がいない世界にいきなり召喚されてさ、悪の魔王を倒して来いっていうけど……私ら生かしてる時点でわりと温情あるし、それにいうほど悪人かって思う。確かに威圧感はすげーけど……」
「それな」
小野瀬は自分の頭で考えだした。
まぁ、異世界来てチートスキルもらって気分が高揚して何でも言うことを聞いちゃうのはよくわかる。そういう心理を知ってか知らずか利用した帝国。
そういう人は一度自分の頭で考えるとすぐに止まってしまう。
「だから私はもう戻りたくない。手を貸したい」
「……しんよーならない」
「へきちー?」
へきるが信用ならないとむくれ顔でいっていた。
「本当だってへきちー! 私はもう戻る意思は……! あっちにも何もしないし!」
「信用成らないっ! だって……だってずっとひよくんにべったりくっついてるし! ひよくんは私のっ!」
「俺は俺のもんだよ」
「っていってるし」
「むきーっ!」
「小野瀬もひっつきすぎ……」
「あ、ごめん」
小野瀬が素直に離れると、へきるが俺に抱き着いてくる。
ぎゅーっと力強く握りしめられて、ちょっと苦しい。お前どうしたんだ? そんな独占欲出して。天真爛漫なお前はどうしたんだよ。
ま……柔らかいおっぱいが当たっててちょっと嬉しいのは秘密だけど。
「じゃあ今後小野瀬はどうするんだよ。牢屋には行きたくねえっていっても魔王様はお前を信用しないぞ」
「ですよねー……」
「僕たちも帝国に召喚された勇者ってことで一応捕縛されてる最中だしねー……。そういうのがなかったら一緒に冒険者でもどう?とか誘ったんだけど……」
「あっ、ならさ」
小野瀬が何かを言い出すようにひらめいた顔をしていた。
「私たちで帝国ぶっ潰そー!」
とんでもないことを言い出した。




