日和ってかわいい?
日和の体を揺さぶるへきる。
日和はにへらっと笑いながらぐっすりよだれを垂らして眠っていた。
「ひよくん! 起きて!」
「……チッ、こんなことする輩が魔王城にいたとは。誰だ、これを作ったのハ!」
「ねぇ、魔王様! なんでひよくん寝ちゃったの!?」
「夢語草と呼ばれる植物のせいだ。この植物は非常に強い毒性を持っていて食べるとすぐに寝て眠るんダ」
「……お、起きるよね?」
「いや……寝ている本人が夢の中で夢だと認識しないとまず起きることはなイ」
魔王は頭に血が上っていた。
まさかこんなことをする輩がどこかにいたとは。おおよそ対象は魔王だったのだが、不幸なことに魔王には夢語草の耐性がついていた。
へきるが効かないのはへきる自身のフィジカルが、大体の毒に対して大きな耐性を持つ。
日和は体が竜人とはいえどへきるのような耐性は持ち合わせていなかったのが不幸だった。
「チッ……。作った奴を今からぶち殺してクル。待っていろ」
「魔王様……ひよくんどうしよう……」
「本人が夢だと自覚して目覚めるのを待つしかないが……。夢は精巧に作られ痛みも感じるように作られている。まず変わらない日常風景だと夢と認識することはまずナイ。起きるのは難しいナ」
「……そうだ! ミツは聖女だったし回復魔法を」
「でも状況は変わらないゾ。この草の毒は非常に強い睡眠効果を持つだけであるから回復魔法では目覚めん。体は休んでいるから回復はできんのダ」
「そんな……」
へきるにとってそれは絶望だった。
日和だったらどうにかして起こせるという謎の信頼があるが、へきるは自分が頭は悪いというのも自覚はあるのでどうしようもないということが理解できていた。
やることがあるとするならば神に祈ること、それぐらいだった。
へきるは日和をじっと見る。
「いや、ひよくんなら大丈夫。きっと気づくよ。今はこんな可愛らしい寝顔を見せてるけど、変わる前は凛々しい男の子だったんだからっ! 頼りになるのはひよくんだったからきっと大丈夫!」
そう自分に言い聞かせた。
へきるは日和の顔を改めてじっと見る。前のような少し男らしい顔つきをしていたころと違って、今は完全に女の子の顔だ。
もともと中性的な顔じゃなかったし、私がずっと側にいなければ女子から告白されてたであろうぐらいには顔も整っていた。
けど今はロリ。へきるは白い肌とぷるぷるとした唇を見て、少し赤面する。
「やっぱ可愛い……。今のひよくんめっちゃ可愛い」
寝ているときだけしかじろじろ見れないからこの機会は新鮮だった。
「私、恋愛はノーマルだったつもりだったんだけどひよくんの顔見てるとひよくんなら女の子でもマジでイケそう……」
へきるはもともと昔から日和のことが好きだった。
ライクではなく、ラブの形で。でも昔から距離が近かったし、今更告白するのもどうかなって思って告白はせずずっと幼馴染という関係を続けていた。
日和もグダグダ言いながらも自分のそばから離れることがなかったので安心していたのもあった。
「私がひよくんのことが好きでも、ひよくんは私のことを好きかどうかはわからないもんねぇ」
もしひよくんが男の子が好きになったんだとしたら応援しよう。
ひよくんに好きな人が出来たら応援しよう。そう心に決めた。
「自分の心はいくらでもわかるけど幼馴染とはいえ人の心は読めないの辛いな……」
こんなにも私は好きなのに。
「というか早く目覚めてよひよくん。王子様のキスが必要なら私がしてやるぜ」




