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俺が聖女で勇者が幼馴染で  作者: 鳩胸 ぽっぽ
オルフェリート王国召喚編
8/103

崩落事故

 冒険者ギルドでアレンさんの話を聞いているとものすごい勢いで入ってくる男の人。

 息を切らしているようだった。だけど頭からは血を流していて只事ではない様子。


「大変だ! ムドル山道で魔物による崩落事故が起きちまった!」

「ムドル山道で!?」

「む、ムドル山道?」


 どこだそこ。

 隣ではへきるが地図を開いて場所を調べていた。王都から隣町に繋がる道のようで一番近い道。


「魔物の数は?」

「ざっと8体……それ以上いるかもしれねえ……」

「そうか……。わかった。今俺が行く」

「わ、私も行きます!」

「お嬢ちゃんはここで待ってろ。魔物退治は俺たち冒険者の役割だからよ」

「神殿へ運ぶ馬車を持ってって欲しい! 乗合の馬車が襲われたから負傷者も多いんだ」

「なら俺…私行きますよ」


 俺は手を上げた。

 負傷者がいるなら俺が手当したほうが早い。崩落事故ともなると結構ひどい怪我じゃなかろうか。

 

「お嬢ちゃんが行っても……」

「……いや、聖女ちゃんだったか」

「はい」

「回復魔法が使えるな……。よし、連れて行こう。何があっても俺たちが守ってやる。聖女ちゃんは患者の手当だけをしてくれ」

「わかりました」


 俺はアレンさんと一緒に向かうことになった。

 馬車に乗り込み、現場へと向かっていく。すると、後ろからなんか息が切れてる音がしたかと思うと、馬車に強引に乗ってきたへきる。


「へきる!? 走ってきたの!?」

「うん! つかれたぁ。走ってる馬に追いつくのきついね」

「お前休んでろよ……。毎日の稽古で疲れてるくせに」

「それとこれとは別! 私だって何かやらないと……。ひよくんに置いてかれちゃうから」

「……そうかい」


 へきるはいつもまっすぐだなぁ。

 馬車が止まり、目の前にはたくさんの瓦礫の山と瓦礫の山の上で馬鹿騒ぎしている魔物の姿があった。

 馬車に乗っていた冒険者たちは武器を構える。


「勇者へきる! いざ参る!」


 へきるは剣を構え、土砂の上を登っていく。

 速い……!? へきるは1匹まず切り捨てた。真剣な表情でへきるは敵を殺している。

 いつものへきるとは違う。ヘラヘラと笑っているへきるじゃない……。真剣、自分の役割を全うしようとしているような、真剣な眼差し。


「かっけぇ……」


 俺は思わずそう声に出してしまった。


「あ、あの子に続け! 早いところ片付けて救助だ!」


 へきるは斬撃を飛ばし、空を飛ぶ魔物を撃ち落とす。

 そして、数分で魔物の群れは片付いた。あとは土砂を掻き分けて下にいるであろう人たちを助けなくちゃ。

 馬車に積んでいたスコップでみんな土砂を掻き分けて声を上げながら探していく。


「聖女ちゃん! 一人発見! 息してるけど弱い!」

「わかりました! 向かいます!」


 怪我人の元に向かい、回復魔法をかけた。

 俺は俺の役割を全うしなくては。助けられるのなら全力で助ける。異世界に来て、何もしないというのはゴメンだ。

 あっちの世界では親孝行とかも出来なかったし、社会に対しても何も貢献できてない。けど、この世界では俺には力がある。

 だから……やんなくちゃ。


「とりあえず瀕死の人からやります! 乗り合わせた馬車の人数は!?」

「12人だ! 俺含めて……。御者もいるから12人いるはず……」

「12人! 今は3人……。まだ結構いるなぁ」


 この山道の崖が崩れてきたのか。あそこで魔物が岩を落として馬車を狙ったんだな。

 生き残ってる人の方が少ない気がするが……。


「あー……」

「いましたか!?」

「いたんだけどよ……。岩で頭が……」


 アレンさんが見つけたのは頭が岩で潰された死体だった。

 突然入ってきたグロテスクな死体。俺は思わず目を背ける。

 

「流石に無理だよな」

「死者の蘇生は不可能、です……」

「そうか……。ならせめて遺品は回収してやって遺族に届けてやらねえとな」


 アレンさんは死体に手を触れる。

 足や腕が潰されてるならまだよかったけど頭は……。即死だったんだろうけどグロい。改めてグロい。

 俺は初めて老衰以外の死体を見た。日本は平和であったと改めて認識できた。


「大丈夫? ひよくん……」

「……あぁ。大丈夫」


 俺は頬を叩き気合を込める。

 そして、再び救助活動を続けたのだった。










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― 新着の感想 ―
[一言] 私はこれを楽しんでいます。このジャンルの作品で最も気になるのは、明らかに中世の時代に、主人公たちが前に進むことができなかったり、現代の道徳を使用することに固執したりすることです。彼らが前進し…
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