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俺が聖女で勇者が幼馴染で  作者: 鳩胸 ぽっぽ
魔王領訪問編
77/103

おざなりな魔王

 魔王領の観光名所はパワースポットといわれても遜色ないくらいの魔力が多かった。

 この土地自体にも魔物の残した魔力の残骸とかそういうのは感じられるが、観光名所は魔力が多い。多くの魔物や魔族が死んだところなのかもしれない。

 あまりいいところとは言えないかもしれんなぁ。


 そう考えていると、日が暮れてきた。


「さ、もう日が暮れてきます。帰りましょう」

「待てよネクロム」


 と、帰ろうと声をかけたネクロムさんに声をかけたのは一人の魔族。

 自分の図体よりデカい金棒を抱え、怖い顔でネクロムさんをにらみつけていた。


「そろそろ四天王の座、渡してもらうぜ」

「……」

「四天王ってそうやって入れ替わるの?」

「先代魔王様は実力で選んでおりましたから、負けるようであれば四天王交代もあり得たんです。その名残ですね。今の魔王様は好んでないやり方だそうですが……」

「ごちゃごちゃうるせえよ!」


 金棒がネクロムさんに襲いかかる。

 へきるが受け止めようと間に割り込もうとしたので止めておく。ネクロムさんが何かするつもりだし、多分これに交じったらいけない気がした。


「なんで止めるの!」

「やめとけ。魔王が嫌ってるやり方だとしてもこれが四天王にトライするチャンスなんだろ。部外者の俺たちが割って入ったらだめだ」

「そうです。一応、これがやり方なのです。召喚」


 ネクロムさんは数多の死体を呼び起こした。

 死体は男に一斉に襲い掛かる。数人の死体を金棒とネクロムさんの間に割り込ませて威力を相殺し、物量で男を押しつぶしていた。

 死体に押しつぶされて、金棒を手放す男の人。召喚が終わると、男の人は重さがゆえにべちゃんこになって死んでいた。


「チャンスをつかもうとすると死ぬこともあります。もちろん、私が負けるのならば私が死にます。魔王様には早く代替するためのしきたりを変えてほしいですが」

「…………」

「私もこんなに簡単に人を殺すような魔物で幻滅したでしょう。見苦しいところをお見せいたしました」

「い、いえ!」

「魔王軍四天王も常日頃から命がけってことか」

「そうですね。みんな勝負を挑まれたりして……そのたびに殺しています。本気の相手には本気で返すので」


 命のやり取りが人間以上に苛烈だ。

 あの魔王様になってから人間への対応は軟化し変わっていったと言えど内部はそう簡単に変わるものじゃないんだろう。

 そもそも、魔王軍は実力至上主義という感じなんだろうな。魔王が一番強い。それははるか昔から変わらないんだろう。


「人間から見たら怖いでしょう?」

「いや……私はそういうのもアリだなって思いますし!」

「……俺もまぁ、そういうのはあるんだろうなって踏んでたから」

「そうですか。そういっていただけるのならば少しは幸いです」


 俺としては魔王が今の現状にどう思ってるのかが気になる。

 あの魔王……人間に友好的に接することしかまず頭になくて内部をだいぶ放置してるんじゃないだろうか。いや……どちらを両立させるというのも困難な話だけれど……少なくとも上に立つ以上、どちらを考えなくちゃいけないはずなのに。


「魔王に直談判してみよう。今のこと」

「え?」

「あの魔王、多分この内部のことはあんまり手出ししてない」

「そうですね……。魔王様は人間との関係にお忙しいですから」

「だからといって内部を無視するのもまた違うんだよ。俺の口からあまり言いたくはないが、上に立つ以上内部も無視するのはな」

「だからといって直談判するの!? めっちゃ積極的だね!?」

「この俺に好きだと言ってきたやつがそういうおざなりなことをしてるのはムカつく」

「ん?」


 俺のことが好きならばきちんとやることはやってほしいと願うのだ。

 へきるだって普段は何も考えナシだけどやることはやっている。自分の役割をきちんとこなしていないのは腹立つ。


「ひよくん魔王に好きだって……えええええ!?」

「……言ってなかったか?」

「言ってない!」

「悪い……」


 言ってなかったか。











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