魔王領へ!
空を飛ぶ魔物に乗る。
デカい金属質の羽をもった大きな鳥が持つ籠。それで魔王領にいくようだ。
「魔王領は魔物と魔族が手を取り過ごしているんダ。魔物を見ても攻撃しないようにネ」
「…………」
「元気ないゾ帝国の勇者」
「そうよぉ~。ほら、楽しい楽しい旅行よ」
「ひぃっ!」
「アイナさん楽しみですね……」
「そうですね。魔族や魔物がどう過ごしているのか少し興味があります」
国王様曰く、俺たちが監視していてほしいので連れて行ってほしいそうだ。
ジョマーとアイナを共に、6人と魔王様で魔王領へと向かっていた。俺と魔王様は浮遊できるので籠の外にいるが、ほかはみんな籠の中。
「それにしてもひよりクンも空を飛べるとは驚いたネ! 学んできたのカナ!?」
「まぁ、教えてもらいましたね」
「いいことダヨ! ひよりクンは古代人のような感じで魔法を使えるようだネ」
古代人って古代魔法を使ってた人たちのことかな。
「ジョマーさん、文吾くん好みですか?」
「好みも好みよ? どんぴしゃ」
「頼む、俺をここから身投げさせてくれ……」
「自殺はダメだよ文吾くん! 失礼だよ!」
文吾、ジョマーに気に入られてめちゃくちゃ心折れてる。正直すまんかったと思ってる。ミツのほうはアイナさんと和気あいあいと魔王領楽しみだねとか話してるみたいだが。
「ジョマーさんかわいーね!」
「そーお? 勇者様に言われるとちょっと照れちゃうわぁ」
「もう本当に帝国にはなにも加担してないし追放されて何もかかわりがないので今すぐこの地獄から解放してくださいお願いします」
「照れなくてもいいのよ」
ぎゅっと抱き着くジョマーさん。いやそうにもがく文吾。
初めて女の子になってよかったと思った。俺も男だったら狙われてたか……? いや、ないな。俺は文吾と正反対の顔つきだったしな、うん。
「魔王領はどこに?」
「南に行った先にあるの。結構おぞましい雰囲気になってるけど気にしないでネ」
「おぞましい雰囲気?」
「見えてきたヨ」
と、目の前をみると明らかに紫色の大地があった。
暗雲が常に立ち込めていて、雷がゴロゴロ鳴り響いている。うわぁ、本当におぞましい雰囲気。魔力もたくさん感じる。
「さまざまな魔物が暮らしてるからネ。毒をもつ魔物、雷を操る魔物。そのせいでこんなんナッチャッタ」
「あぁ……多種多様な魔物が住むが故ですか」
「敵意を向けることはないから安心してネ。とりあえず入り口からは歩きだヨ。飛んでると雷が当たるからネ」
雷は高いところに落ちるんだったか。
俺は手前で浮遊魔法を解く。へきるたちも籠の中から出て、魔王領に入る入り口にある森を見ていた。
木もところどころ枯れていたり、なにか繭のようなものがぶら下がっていたりなど不気味な雰囲気を醸し出している。ハロウィンかよ。
「さぁ! 魔王様のお帰りダー!」
魔王様は意気揚々と歩きだした。
それに続くアイナさんとミツ。怖いもの知らずなのか、興味のほうがまさってるのか何も臆することなく歩き出していた。
それに続くのはジョマーと文吾。ジョマーはへっぴり腰で文吾の腕をつかみ怖がっていた。
「な、なにも来ないでしょうね」
「これが女の子だったら最高だった……」
文吾は天を仰ぎ涙を流していた。




