魔王がなぜか部屋にいる
国王様も、大臣たちも帝国側が何か企んでいるのがわかってくるとピリピリし始めていた。
何考えてるのかわからない恐怖というのはデカい。外交もない以上、あちらの情報はあまり出回ってこないのが原因だろうか……。あそこは他国の出入りを禁止してるとか言ってるし情報が入らないのは当たり前なんだろうが……。
「最近王城の人たちめちゃくちゃしかめっ面じゃないカナ」
「なんで魔王様がナチュラルに俺の部屋にいるんですか?」
「ふふ。見ない間に最愛の人が強くなったから見に来たんダ。今日もかわうぃーネ!」
呑気にウインクをしてきた。
「んデ、そっちは噂の勇者ちゃんカナ? 初めて見たけど……。うん、とても強ソウ」
「強いっすよ?」
「強いと思ってます! 勇者のへきるです! よろしくお願いします魔王様! バトルしましょう!」
「ナンデ?」
「勇者と魔王って戦う仲じゃないですか!」
「……それは魔王が人間に害をなして敵対関係にあったときの話で今は友好的に接してるんだケド」
「でも勇者vs魔王ってお決まりで」
「えぇ……」
「最近、良い所見せられてないし! 魔王様討伐じゃー!」
「やめろへきる」
俺はへきるを蹴飛ばした。
「うぅ……。シックドラゴンだって倒してないのに何もいい所見せられてないよぅ……」
「だからって魔王に手を出したりすんなよ」
「ほっ……。助かったヨ。経験の浅い勇者と戦って負けることはないにせヨ、無事では済まなかっただろうからネ」
「……私のほうが強いもん」
「どこからそんな自信が湧いて出るんだよ……」
へきるはソファに腰を掛ける。
「同盟学校もいけなくなっちゃったし……暇だなァ」
「暇? そっか今君たち暇なのカァ」
「魔王様どうしたんすか?」
「暇なら私の領地に来なヨ! 歓迎するヨ勇者様方!」
「……いきたい!」
「どこにでも好奇心で行きたがるところお前のいいところだよへきる……。へきるが行きたいそうなんでいってもいいですか?」
「モチロン! でも、国王様と王子様には念のため行き先を伝えておいてネ! 勇者様たちを連れていくことになるカラ。一応何かあったときのために伝書ガラスという魔物を置いていくってことも伝えておいてネ。伝書ガラスに届けてほしい書物を持たせれば届けてくれるからネ」
魔王様はウキウキで荷造りを始めていた。
ここ俺の部屋だし魔王様なんで俺の私物をちょっと詰め込んでるんすか。と言いたかったが、もうつっこんだら嫌な予感がするのでやめておいた。
魔王様……。こんなお茶らけてるけど、実力はホンモノだろうな。確かに今のへきるでは勝てるビジョンはない。戦ったとしたら負けるだろう。まぁ、へきるもタダでは負けないと思うが。
「お前も準備しておけよ。俺が国王様に伝えて来るから」
「わかった! 楽しみだなー魔王領!」
魔王領か。いったいどんなところなんだろう。




