同盟学校の崩壊と復興
同盟学校領の損害は大きかった。
シックドラゴンの毒霧は同盟学校領全土に及んでいたようで、体調が悪くなっていた人も多く建物の倒壊に巻き込まれて亡くなった人もいた。
魔物による未曽有の大災害。帝国の冒険者が封印していたであろうミスリルの大剣を封印していた場所から引っこ抜いたことが事の発端だったようだ。
「あれが帝国の言っていた伝説の魔物だったのでしょうか」
「いや……姿かたちが違うからな……。特徴はライオンの顔に蛇の尻尾でしたよ」
「その帝国が話した伝説の魔物は空想上のものだったと仮定してもよろしいかもしれませんね」
伝説の魔物はいなかった。その代わりに災害が起きた。
俺は転移魔法をダメもとで使ってみて、人物指定ができることを知り、学園長に報告に向かって学園長も任務を放棄してこちらに戻ってきていた。
学園長がいない時を見計らって起きたこの災害。まるで人為的にやったかのような感じだった。
「とりあえず学園はしばらく休校になるそうですわ。国に戻りましょう。復興までは学校では暮らせませんし、戻る寮も魔物の襲撃により大幅倒壊しましたし」
「そうですね。復興はいつまでかかることやら」
同盟学校はしばらくの間休校となるらしい。
学んでいた生徒は残念ながら卒業扱いとなり、独学で学ぶしかないようだった。復興には数年かかるだろうという学園長の見通しで、卒業すらままならぬ状態となっている。
学園長も指揮を執りながらゆっくりと復興の手伝いをするらしい。
「せっかく学校を楽しめると思ったんだけどなぁー」
「仕方ないことだろ。この手の災害は読めねえよ。伝説の魔物とやらの噂で踊らされて対策をしようにもことが早すぎたんだから」
「噂が流布され発覚してからものの数日でしたものね……」
「ああ。対応が後手に回りすぎた。対策がままならないまま起きてしまったからな……。帝国の目的が同盟学校の破壊ならば目的は達成したのだと言える」
「何のために同盟学校を?」
「それは同盟が邪魔だからじゃないですか? 三国が手を取り合う状況は嫌だったから……」
「真相は帝国しか知らん。だが学校が壊された程度で同盟がなくなるわけではない。いったい何が目的なのかはさっぱりだが……。対応は父上に話してからにしよう。俺だけでは手に余る」
ハルト様は疲れた顔をしてそういっていた。
まぁ、これはもう国としての問題になるか。
「それとなんだが……。一つ気になるのは帝国の勇者だ。勇者は圧倒的な力があるから帝国の勇者が力を付けて侵略して来るかもな」
「それは問題なくない?」
「大問題ですわ。以前の勇者祭で手も足も出なかったような輩ですのよ? 力をつけでもしたら」
「……それなんですが」
俺はミツたちのことを言うことにした。
帝国が今何かしようとしている以上、黙っていてはだめだと思ったから。
「今現在、帝国の勇者は帝国から追放されてオルフェリート王国で冒険者をしてるんです」
「……は?」
「前に帝国から逃げてきたって言って偶然会ったんです!」
「なぜそれを早く言わない……」
「すいません……」
「帝国は勇者を手放した、とは考えづらい。その勇者に一度会う必要がある。もしかしたら追放されたと見せかけて国の内情を探っているかもしれん」
「……ですね」
「そ、それはないですよ!」
「あるんですわ」
「あるんだよへきる。俺たちだって所詮は口で話した程度の仲だろ。帝国のことを良く知らなかったときはあまり気にしてなかったが実情を知ってくると許せるわけじゃないんだ。追放されたかどうか、真偽は不明だからな」
確かめてない以上、違うと必ずしも言い切れないのが事実なのだ。
帝国の考えが分からない以上、警戒するしかない。帝国側から来たってだけでちょっと怪しいからな。




