事後
王子たちのところにすぐにシックドラゴンの討伐報告が入ってきた。
「ハルト様。シックドラゴンの討伐が終わったそうだ」
ハルト王子のもとにリヒターがやってきた。
リヒターが持ってきた報告。それは嬉しい朗報だったのだが……。
「早くないか? まだ勇者を送って数分もたってないが……。楽勝な相手だったのか?」
「いや、倒したのは勇者ではないらしい」
「勇者ではない? 誰だ? 聖女様か? ヒヨリは魔法にも優れている。討伐できてもおかしくはないが」
「いや、もっと僕たちより強い存在だ」
「強い存在?」
「この鱗、見ればわかるだろう」
リヒターはヘヴヘヴォスの鱗を取り出した。
先ほどヒヨリから一枚もらい、説明のために持ってきた。ハルトと、アルスラーン皇国、聖ラファエロ王国の王子たちはその鱗を目にして驚きを隠せていなかった。
「天竜ヘヴヘヴォスの鱗じゃないか!? なぜそんなものがそこに」
「天竜ヘヴヘヴォスがヒヨリさんにプレゼントしたらしい。実際教師もヒヨリさんとなにか話しているヘヴヘヴォスを目撃している。自分で鱗を落としていったそうだ」
「……ヒヨリはヘヴヘヴォスと会話できんのか?」
「ドラゴンと会話するって……可能なのか?」
「それは僕にもわかりかねる。が……意思疎通ができていたのは事実だ。現に、シックドラゴンはヘヴヘヴォスにやられている。ヘヴヘヴォスがヒヨリさんを助けるためにシックドラゴンをぶっ殺したそうだ」
ハルトは頭を抱えた。
ドラゴンと意思疎通ができ、助けられた存在。ありがたい限りではあるのだが、それと同時に危うさもある。
ドラゴンの寵愛を受けている存在の気を害せば、ヘヴヘヴォスが襲い掛かってくる危険性も頭によぎっていた。
ヒヨリは真面目で、そういうことはしないとは思うが、ヘヴヘヴォスが独断でつぶしに来る可能性もなくはない。そういった意味で、ドラゴンと意思疎通ができる相手がいるというのは考える余地がある。
「……ヒヨリはどんどん我が国の危険因子になっていくな」
「大変だなおまえんとこは。ただ……それを帝国が知ったら利用しそうだな?」
「たしかに!」
「あまり公では言わないことだ。わかったな、リヒター」
「わかっているとも。壁に耳あり障子に目ありという言葉があるそうだからね。どこで誰が聞いているかわかったものじゃない」
リヒターは鱗をしまう。
「さてと。もうシックドラゴンの話はあとにしてまず優先すべき議題はこの街の復興だろう。街が逃げてきた魔物によってほとんど壊滅状態だ。学校も多大な損害を受けている。学園長の指示がない今、指示を出すのはハルト様たちですよ」
「わかってる……。しばらく学校は休校だなあ。学園長に報告はいってんのか?」
「学園長の出張先はものすごく遠いから……1日2日で届くようなものじゃない。さっき向かったばかりだからな……」
討伐に時間がかからなかったこと、学園長が出張に向かって1日経過していることも相まって、学園長がこの事実を知るのは少し先の話になりそうだが。
だがしかし。
「やっほー」
「え」
「ヒヨリちゃんから聞いたよ。大変なことになったそうだね」
学園長が戻ってきていた。




