冒険者ギルド
朝を迎えた。
へきるは今日は訓練を休ませてもらったようで俺たちは街の方に向かうことにした。
何気にこの世界に来てから初めての王都の街。お小遣いを国王様から貰ったので何か買うことも出来る。
「なんか本当にファンタジーの世界に来た感じだねぇ〜。地球じゃ見かけない装備の人がたくさんいる」
「鎧に馬鹿でかい杖に……。ゲームの世界みたいだな」
「こういうラノベってステータスって唱えたら自分のステータス見れるんだよね。ステータス!」
へきるはステータスと唱えるが何も出るわけがなく。
「できないの!?」
「むしろなんで出来ると思ってんだよ。自分の能力を数値で見れたら苦労しないっての」
自分の能力が数字で表されたら得意不得意とかすぐに分かりそうだ。
俺らはなんの目的もなく王都の街を歩いていると冒険者ギルドと書かれた看板が目に入った。
「冒険者ギルド! 異世界っぽい!」
「なんで冒険者って呼称なんだろうな……。冒険者ってより何でも屋に近い気がするけど」
「まぁなんでもいーじゃん! それでわかるんなら!」
「いいのか?」
それにしてもここが冒険者ギルドなのか。
なんつーか、割と想像通りの見た目をしている。
「中に入ろ!」
「いや、なんも用事はねえし寄る必要は……」
「あわよくば絡まれて返り討ちにしたい!」
「そんなに治安悪いのかよ」
へきるはギルドの扉を開けた。
知らない女の人が入ってきたからか視線がこちらに向けられているが……。
俺も少しキョロキョロしていると。
「あ、聖女ちゃんじゃーん!」
「うえ……」
「ああ、噂の?」
「昨日ぶりだね! 何してるの?」
「いや、友達が入ってみたいと言ってきまして……」
「なるほど。じゃあ……僕が案内してあげようか?」
下心丸見え……。
断るのもなんか申し訳ないが、なんか案内してもらいたくないな……。
女の子がナンパにあってるときってこんな感じなんだ……。ちょっと背の高い男の人威圧感がすごくて怖い……。
「死ねオルド」
「ぎゃっ」
後ろから思い切りぶっ叩かれて気絶したオルドさん。
叩いたのは筋肉質な男の人だった。
「すまねえな。怖かったろ」
「い、いえ……」
「聖女ちゃんも冒険者に興味あるのかい?」
「まぁ少しは……」
「そうか……。あまり良いものではないが……。とりあえず案内しよう」
筋肉質の男の人が案内してくれるようだ。
わーいと思っていたら背後から視線を感じた。へきるが涙目で俺をみていた。
「なんで私差し置いていい感じになってるの……!」
「えぇ……」
「ずーるーいー! 私も絡まれたい〜!」
「んなこと言われても絡まれねえよ普通は」
「これが例外なだけだ。他の冒険者はきちんと節度を守っている。最近は人手不足だからみんな優しくしてくれるぞ」
「え〜! そんなのつまんない……」
「優しくして居心地良くさせてやらせるためだろ……。むしろ新人に絡んでたら誰もやりたがらねえよ……」
「その通りだ。昔まではいたが、そういうのは良くないという話があって冒険者は最初にそういう研修を受ける」
そういうハラスメントは異世界でも許されないってことだ。
「あぁ、そういや自己紹介してないな。俺はAランク冒険者のアレン。よろしく頼む」
「あ、えと……ヒヨリです」
「へきるです……」
「ヒヨリにへきるか。覚えたぞ」
アレンさんは冒険者ギルドの内部を案内してくれるようだ。
それは良いがへきるがあからさまにローテンションになっていた。こいつ……。
「ここが依頼受付だ。ここでは一般の人が冒険者に頼みたい素材の調達などの依頼を受け付ける。依頼は報酬金額を決めて手数料と共にお金を冒険者ギルドに支払うんだ。住んでるところを教えてくれれば依頼が完了したときに手紙が家に届くからな」
「ない場合は?」
「定期的にここに来てもらい聞いてもらえれば答えてもらえる。ただ、難しい素材や見合わない報酬の場合誰も受けてくれない場合があるからきちんと適切な報酬を払うことだ」
なるほど。ここで手に入れて欲しい素材とかを頼めば良いのか。素材とか、駆除依頼とか。
「で、こっちが冒険者登録受付。冒険者登録をする、冒険者登録を解除する時はこの受付だ。冒険者についての説明は冒険者になったときにしよう。で、こっちが依頼窓口。依頼を受ける際にこの窓口で手続きが必要になる。冒険者は命がけだから帰ってくるまでの期間を決める。その期間を過ぎて帰ってこない場合、向かった近くの冒険者ギルドに安否確認の手紙を送り、安否がわからないと自動的に捜索依頼が出されるんだ」
「あー……」
途中で死んでる場合もあるってことか。魔物にやられて……。
「それでも見つからなかったら?」
「7ヶ月見つからなかった場合死亡扱いになる。遺品や遺体を見つけた場合はすぐに死亡扱いとなる」
「へぇ……」
「だからなるんだったらきちんと期日は守ることだ。捜索依頼は出されたくないだろう?」
「ですね!」
「でももしその期間が過ぎちゃうってわかったら?」
「その時は近くの冒険者ギルドに寄って自身が依頼を受けたギルドを告げて手続きをするんだ。そうしたら引き伸ばすことができる」
なるほど。よく出来てる……。
「依頼窓口はこれで全部だ。あとはあっちは素材窓口。素材の買い取りを主に行なっている。頼まれていた素材や魔物を狩った際に得られた魔物の死体を売るのはあそこだ。あそこは冒険者じゃなくても利用できる」
「そうなの?」
「魔物を偶然倒してしまった、馬車でぶつかって魔物を倒したってこともあるからな。そういうのも買い取りをしている」
へぇ……。
結構システム化されてるんだな。異世界って言ってもシステム的にはあまり現代日本と変わらん気がする……。
「冒険者ギルドこれじゃない感がすごい……」
「いや、便利とか役割分担は大事だろ……。結構分割されてるんですね。働き方改革みたいな?」
「まぁ、そういう感じだ。それにこうした方がわかりやすくて良いだろ。どこで何をするのかとか、そういうのをわかってもらった方がこっちも説明する手間が省ける」
「冒険者も変わってくものなんですねぇ……」
俺の想像していたギルドとは違うがこっちの方が何かと便利なんだな。