気怠い朝の目覚め ①
図鑑は分厚く、とても一日で読める内容ではなかった。
明日また再び探してみようということになり、分かれて翌日。朝起きると、頭がとても重い。起き上がるのもとても困難なほど頭がぐらつき、吐き気もすごかった。
「風邪ひいたか……? とりあえず回復魔法っと……」
回復魔法を自分にかける。
が、一時的に治ったと感じたそのけだるさは回復魔法が途切れると再び症状が出始めたのだった。なんでだ? 回復魔法をかけたんなら病気だったら治るはずなんだが。
まぁ、なんにせよ再び訪れるんなら常時回復魔法をかけておいて……。
再び回復魔法をかけて、立ち上がると部屋がノックされた。
扉を開けると、焦っているカタリナ様が立っていた。
「どうしたんですか?」
「た、大変ですわ!」
「大変?」
「この寮……。男子寮も含めて全員体調が悪いと言っておりますの!」
「えっ」
体調が?
妙な話だな……。俺もさっきまでは体調悪く、今現在も回復魔法をぶっ続けでかけてないと倒れそうなくらいけだるさがあるというのに、それが全員に?
「って、部屋の中にもすごい霧がかかってる!」
「気づいたんですの今!? ともかく、全員に回復魔法を……」
「いや……。これがなにか要因があるとして、回復魔法は意味ないと思う」
「なぜですの!?」
「俺もさっきまで体調悪かったし、回復魔法が途切れるとまた体調悪くなっちゃうから」
「え……」
「今もぶっ続けで回復魔法を自分にかけてる。多分途切れると動けないくらい体調が悪くなると思うし……」
というより、全員というがカタリナ様は元気なんだな。
「無理もないね! これはシックドラゴンの仕業だからね」
「うわ、精霊」
「それよりシックドラゴンってなんですの!?」
「シックドラゴンはねぇ、口から人に有毒な煙を吐くんだぁ。わたちも初めて経験するけどシックドラゴンってこんな感じなんだねぇ」
「……」
シックドラゴン。
たしか先生はドラゴンは確認できてる種類が限られていて、ほかは未確認だと言っていた。シックドラゴンはその確認されたドラゴンの中に名前はなかった。
つまり体験した人、見た人は全員死んでるから伝わってないんじゃないだろうか。
つまり放置してたら全員死ぬ……んじゃね?
「……今すぐシックドラゴンを倒さないと全員死ぬか?」
「うん。死ぬよ」
「え……」
「カタリナはわたちが守ってるから平気だけどねぇ。ほかの人間には精霊がついてないからねぇ。よっぽど毒に耐性がある人間じゃないと長生きは……」
その時だった。
「ひよくんひよくん! 外凄い霧!」
元気そうなへきるが飛び出してきた。
こいつ……元気そうだな。毒が効いてないようだ。よっぽど毒に耐性がある人間。それはフィジカルが圧倒的に強化されたへきるだな。
内臓機能も底上げされてるのか並大抵の毒とかは無効化するんじゃねえのこいつ。
「えっ、元気そう……ですわね勇者様」
「え、なにが?」
「体調悪いとかない?」
「全然元気!」
強い。
「そんな元気なへきるに頼みがある」
「え?」
「今すぐシックドラゴンというドラゴンを倒しに向かってほしい」
「……なにそれ! ドラゴン!?」
「あぁ……」
へきるにこの現状を説明し、俺はとりあえず回復魔法をかけて回らないといけないからということでへきる一人に討伐を……任せたいが、同行者が欲しい。
へきる一人だと帰ってこれるかどうかわからんしな。候補としては壬午、東なんだが……。二人はへきると違って圧倒的なフィジカルというものはなく、体は普通の人間だ。多分体調を悪くしてるだろうな。
「とりあえず急いで壬午たちに回復魔法を……」
「ここから男子寮に行くには時間がかかりすぎですわ! ほかの皆さんは目を覚まさないくらい衰弱しておりますの……。もう猶予はほとんど……」
「え、そうなの?」
俺は気怠いくらいで意識がなくなるほどじゃ……。
もしかして竜人だから竜の血で少しは抑えられてる……のか? まぁなんにせよどうするか……。ここは女子寮。
男子寮に近いとはいえど、歩いていくなら……浮遊魔法で……。
「あ」
いい奴がいた。
「俺が何とかするからへきるは男子寮に向かって壬午と東をたたき起こせ!」
「了解!」
女子寮にはあいつらがいた。




