トーナメントの結果
魔力がすっからかんになり、俺は学園に戻ってきた。
長袖の制服で腕を隠し、極力舌を出さなければ竜人ということはばれない……はず。でもちょっと怖いので道中は猫に変身していったのだった。
猫になり、学園長に抱えられながら帰っていると闘技場のほうから歓声が聞こえてくる。
「どうやらトーナメントもそろそろ終わりのようだよ? 結果だけでも見ていくかい?」
「そうですね」
俺は闘技場に立ち寄った。
舞台の真ん中では木刀を静かに降ろしたへきるの姿が見える。冷静に、まっすぐ前を向いていた。が下にはうめき声をあげている男の人がいる。
「ありゃ第一席じゃないの? 勇者ちゃん、強いね」
「第一席なんですか? ってかへきるめっちゃ不機嫌」
「将来有望だね。魔力はあまりいいとは感じなかったけどここまで強いか。うちの第一席も天才と称されたほどの有望株だったんだけど」
へきるのあの顔……。何とも思ってない顔。むしろ、何か違うことに気を取られて不機嫌そうにしている。
そして、会場にはアナウンスが流れた。第一席が降格し第二席になり、第一席の座にシジマヘキルが着席というアナウンス。まぁ、第一席を倒したんならそりゃそうなるかって話だけど……。ここまで強いのかあいつ……。
「本来ならばここで学園長のお話なのですが、学園長は現在、ドラゴン沈静化に……」
すると、学園長の体がぶわっと浮いて、飛んでいく。
これ魔法? こういうことできるんだ……。学園長は俺を抱えたまま、舞台の真ん中に降り立ったのだった。
へきるがむすっとした顔で見ていたが、俺を見た瞬間、どんどん顔がはれていった。
「今さっき帰ってきたので大丈夫だよ。みんなお疲れ! 席を奪われちゃった子はドンマイだけど、めげずにこれからも切磋琢磨! 頑張ってね!」
へきるはにこにこと笑い始めた。
そういや、学園長に何日もかかるかもしれないと言ったからへきるにも数日いなくなるとか伝えたんだっけか。それで不機嫌だったのかこいつ。
そんなに俺のことが大好きなのか。ちょっと嬉しい。じゃなくて。
学園長が歩いて舞台裏に戻る。
「さっき空中を浮いていたのは魔法ですか?」
「そうだよ? 書庫にその魔導書あるから気が向いたら覚えるといいよ」
「……覚えてみます」
「うんうん、魔法に興味持ってくれてるようでなにより」
トーナメントが終わり、俺は外でへきるを待っていた。
すでに太陽が落ち、月が登ってきたころ、へきるは「ひよくーん! お待たせー!」といいながら走ってくる。
俺の猫の変身も解かれていた。学園長と魔力共有していたから変身できてたけど学園長は先帰っちゃったし。
「……なんかひよくんの雰囲気が変。ニセモノか!」
「いや、俺なんだけど……。部屋で話す」
「???」
俺たちは自分の寮の部屋に戻り、俺はへきるにありのままを伝えた。
「え~~~~~~っ!?!? 竜になっちゃったの!?」
「竜の血が混じった半竜人みたいなもんだ! ドラゴンに次来るときに魔物にやられたら困るからだとか……」
「いいなぁー! ファンタジーしてていいなぁーーーーっ!」
「よくねえけど」
へきるは俺の手をさすり、羨ましそうにしていた。
この魚の鱗がそんなにいいのか。
「でもひよくんの言った通りの展開になったね」
「不本意だけどな」
「羨まし! 私も今からエルフとかになれないかな!?」
「無理だろ。エルフは」
「えーっ! 私も人間辞めたーい!」
「フィジカルではやめてるからいいだろうがよ……」
俺は好きでやめたわけじゃないし。まじで不本意も不本意だし。
俺に人権ってものはないのかもしれない。この世界に来て二度も体作り変えられてる気がする。なぜなのか。俺の体には俺の意思が適用されないのか?




