天竜へヴへヴォス ②
初めて見るドラゴンの姿はとてもカッコよかった。
悠々自適に座り、だごこの場所は我が物だと言わんばかりに座っている。
ギョロリとトカゲのような目でコチラを見るドラゴン。
「カッケェ……」
「さて、ここからが正念場! 覚悟決めろよ!」
俺はゆっくりとドラゴンに近づいていく。
ドラゴンは何もしてこない。俺はゆっくりと近づいていく。
俺を守る学園長たちは驚いて固まっていた。俺はその白い鱗に触れてみたくなった。
俺はゆっくりと手を触れる。
その時だった。
「うぇっ!?」
俺の魔力が全部吸い取られた。
思わずくらっと立ちくらみが。ものすごい脱力感が俺を襲う。
ドラゴンの顔をチラッと見ると満足そうにしていた。そして、ドラゴンは俺を見る。
「危ない!」
と、声を出された時は遅かった。
ドラゴンの鉤爪が、俺の胸を切り裂いた。赤い血が噴き出る。
「か、回復……! 使えない!」
「待ってて、今回復魔法かけるから……!」
学園長は慌てふためいたように駆け出してきた。
だんだん意識が薄れていく。俺はそのまま、地面に倒れ伏した。
そして、意識がなくなっていき、何かが口の中に入ってくるような気がした。
俺は目を覚ます。
「あれ、ここどこ?」
知らない場所にいた。
建物の中……だよな。天井があって、ベッドに寝てる。俺はドラゴンに胸を切り裂かれたと思ったんだが。
ここはもしかしなくても地球……じゃないな。どうみても日本の病院の設備じゃない。
「ん〜? ここどこだ? あの世?」
「あ、目が覚めたんだ!」
「学園長? あ、俺生きてたんだ……」
「そう! でもね……」
学園長は俺の腕をまくる。
すると、そこにはビッシリと鱗が生えていた。
「……なんじゃこりゃあああああああ!?」
「ヘヴへヴォスが自分の血を飲ませたんだよ! 龍人になったみたいで……相当気に入られたみたい」
「はぁ!?」
「へヴへヴォス曰く、人間の身体は脆すぎる。ここまで来るのにやられては困るからだと……」
「うせやろ」
ガチガチの白い鱗が俺を包んでいる。
鏡を見ると、舌は二又に分かれてるわ、目は……普通に俺の目だな。
人と爬虫類の特徴をごった混ぜにしたような見た目をしている。
「なんで俺こうなるの? なんか俺の体弄ばれすぎじゃねえ?」
「まぁ、どんまい! 死なないでよかったじゃん!」
「そういう問題かよ!?」
「まぁ、古代もこうしてたんだよ! 今の人間は魔力少ないけど昔は私の魔力量がデフォって言ったでしょ? 多分ヒヨリちゃんの魔力量を持つ人も少なくはあったけどいて、その人たちは龍人となって龍の巫女みたいな感じになってたんだよ」
「……」
確かに納得はできる。
学園長は前に学園長の魔力量がデフォだったと言ってた。となると俺のように膨大な魔力量を持ってた人も少なからず産まれてたという考察は納得できる……。
「これへきるに何て説明したらいいんだよぉ……」
「そのまま言っちゃえば? ドラゴンになったって」
「しかないですよね」
へきる、相当羨ましがるというか、ずるいというだろうなというのが目に浮かぶ。
俺はもう一度自分の体をくまなく眺めてみた。身体全体にはビッシリと鱗は生えてないが、腕とか背中には鱗が付いている。
俺はため息を吐くと。
口から火が出た。
「…………」
「消火消火」
学園長は水を汲んできてぶっかけてくる。
なんかオマケとして炎が口から出て来たんですけど。
「……ドラゴンだね。ブレスも吐けるなんて!」
「今からでも元に戻せないですか?」
「無理だね。君の身体にはへヴへヴォスの血液が入ったんだ。抜くとなると多分全部の血を抜いて回復魔法をかけるしかないんだけど、分離はできないから……すでに自分の体のものだから……」
「…………」
「だから自分の血を入れるために切り裂いて血を出させたんだ。血を混ぜる必要があったから……」
「……」
「まぁ、鱗と舌以外はまるっきり人間だし問題なし!」
「あると思いますけどね!?」
「まぁいざとなったら変身魔法あるじゃん! 教えておいてよかったね!」
……そういう問題じゃないんだよなぁ。
俺は変身魔法をかけてみるが、以前の自分には変身できないようで。
そのことを伝えると。
「……どんまい!」
「異世界に来て碌な目にあってねぇ……」
ちなみにこの鱗、ドラゴンのサイズだから一枚一枚デカく感じてたけど人間サイズになると魚の鱗みたいな……。魚……。魚人って言われても信じるレベル。
すいません、自分の体が勝手に何者かに改造されて翻弄される系のキャラが好きなんです。




