聖女としての力を学ぶ
俺らは国王様に自分たちの力のことを学びたいと告げると、国王様は分かったとだけ告げ、俺らはとある部屋に案内された。
そこには二つの水晶玉があり、目の前にはニコニコと白い髭を擦っている丸メガネの老齢の男性と、鎧を着た大柄な男が立っていた。
「実はの、昨日、王女から風呂でのことを聞いての」
国王様は俺にだけ耳打ちしてきた。
なるほど。用意周到だと感じたがそういう理由か。バックアップは任せても良さそうだな。
「ふぉっふぉっふぉっ。初めまして。私はアーテナ教大司教のオーテム・アルドントという。よろしく頼むの」
「俺はオルフェリート王国騎士団団長、エルゴ・グリーム! よろしくな!」
「あ、巻島 日和っす」
「志島 へきるでーす!」
挨拶を済ませ、国王はまずは自分たちの魔力を測ろうと言う。
魔力というのはこの世界の生物が持っている力で、魔力を消費して魔法を使ったり武器を強化するのだという。
俺らは水晶玉に自分の手を当てた。
その瞬間、水晶が光り出す。
「おわっ!」
「なんと!?」
「え、ひよくんめっちゃ光ってる!? 私そんなんでもないのに!?」
「んだこれ!?」
「手を離すのじゃ!」
俺はそう言われて手を離した。
水晶がパリンと粉々に割れる。ビビった。めっちゃ光った。
へきるの方を見ると、へきるも光ってはいるようだが、俺のような強烈な光ではない。
「ここまで魔力の量が多いとは……。聖女の素質が大アリ、じゃな」
「えっ、そうなんすか?」
「まぁ、嬢ちゃんは勇者としては平均ぐらいじゃねえか? 勇者見たことねえから知らねえけど」
「えぇー! 私もひよくんみたいに光らせたい〜!」
いや、これなんなんだよ。
もしかして光が強いほど、魔力の総量が多いってことか?
となると、魔力の総量は俺はめちゃくちゃあるってことか。もしかして女にしたからそのお詫びとかってこと?
「まぁ、魔力の量はわかった。あとは鍛えるのみだ。俺は勇者、オーテムの爺さんは聖女さんだ」
「よろしくお願いするの」
「っし、勇者! 俺についてこい! 早速戦いってもんを教えてやるぜ」
「お、お手柔らかにお願いしまーす……」
めちゃくちゃテンション下がってる。
「さて、ワシらも向かおうかの」
「向かうってどこにっすか?」
「教会じゃ。ワシはあやつのように即実践というのは難しいからの。まずは回復魔法について教えてやらんとならんし」
「あー、お願いします」
「ふぉっふぉっ」
俺は馬車に乗り込み、教会へと向かう。
教会では、腕から血を流している人などの怪我人ばかりであった。
オーテムさん曰く、この列は冒険者たちが怪我を治してもらいに来たということらしい。自分たちではできないのか?
俺らは教会の中に入っていく。
教会ではシスターさんが祈りを捧げて、怪我人の怪我を見ていた。
「すごい光景」
「そうじゃろ。なにせ、回復魔法は聖職者しか使えんからの」
「……そうなんですか?」
「不思議なことにのぅ。ワシらが魔法の術を隠しとるわけではない。が、聖職者以外は回復魔法が使えんのじゃ」
「ほえー……」
「聖職者を辞め別の仕事に就いても回復魔法は使える。ワシらの見解としては神に仕えたことがあるという事実が大事なのだと思う」
「なるほど……」
「回復魔法は遺伝しないからの。回復魔法が使える者が子を産んだとしても、その子は回復魔法を使えん」
不思議だな……。
だからみんな教会に来て怪我を治してもらいに……。でも来る途中、医院とか掲げた看板があった。そっちでもできないんだろうか。
というか怪我を治せるなら医院いらなくない?
「さらに、回復魔法の厄介な点は身体部の損傷、病気は治せんということ」
「……というと?」
「あ、いや。治せんというのは語弊がある。正確に言うならば、治せるほどの魔力の量が皆ないと言うこと」
「病気とか欠損部を治すのに魔力が大量にいるんですか?」
「そうじゃ。目に見えない内部からの破壊と、無くなったものの再生……。聖女でもない限り無理なのじゃ」
「……俺は出来るんですか?」
「できる。あのクラスならば余裕じゃ。異界から来た者はなにかしら、秀でた物を持っておると言う。貴殿はきっとその魔力の量なのだ。歴代の聖女でもおらんじゃろう。その魔力の量は」
……やばいな。
だんだん聖女のやばさが分かってきた気がする。なくなった腕とかの再生、病気の治療。膨大な魔力がいるあまり、他の人にはできない芸当。
なるほど。やばいわ。そりゃゲームとかでもヒーラーになるわ。
「聖女様には回復魔法を覚えてもらう。まぁ、難しいことではない。魔力の扱い方を学べば自然とわかる。聖女様に関してはそれだけで充分なのじゃ」
「……そうなんすか? てっきりなんか変な修行とかするものだと」
「ないない。魔法に関しては本人の才能が全てじゃからの。まぁ、ゆっくり学ぶといい。ここには見本もたくさんおる」
たしかに。
まぁ、覚えるのは早い方がいいよな。俺は早速教えてもらうことにした。