へきるとの喧嘩 ②
へきるが目に見えるように落ち込んでいた。
「……随分と暗いなオイ」
「仲直りしたくて俺らを呼んだんだよね?」
へきるは東、壬午たちに助けを求めた。
あれから一回も会話という会話を交わしていない。日和の恐ろしさは小さいころに身にしみてわかっていたはずなのにと後悔の連続だった。
「でも意外だよね。日和くんも怒るんだ?」
「ん? お前ら知り合いだったんだろ? 怒るとこ何回か見たことあんじゃねえの?」
「いや、見たことないな。日和は怒ることはねえっつーか、怒ってるところは見たことない」
「私は何回か……。ひよくん、温厚だけど怒ったら超怖い……」
へきるはズーンとさらに落ち込んでいた。
「仲直りしたい~……」
「……なんかプレゼントしたらどうだ? お詫びの印とか」
「ひよくん今私と会話すらしてくれないから取り合ってもくれない……」
「あー」
取り合ってくれないならまず足を止めてくれないなと踏んだ壬午。
正直、付き合いが一番長いのはへきるなのでへきる自身が解決するのが間違いないのだが、その日和がへきると取り合ってくれない以上、時間以外の解決策は思いついていない。
「へきちゃんは何が悪かったかまずわかってるよね?」
「ひよくんの頭をぶん投げたこと……」
「「えっ」」
東と壬午は驚いていた。
というのも、何が悪いか理解してない様子だった。東と壬午は頭をぶん投げられたこととかは気にしてないように見えていたからだ。怒ることはあってもただ少しがなりたてるだけ。
あんな尊厳破壊みたいなことを受けて、それだけで済ませようとしていた日和も優しいなとは思いながら、少しため息をつく。
へきるは根本的な問題が分かってないようだった。
「あのな、へきるちゃん。多分問題はそこじゃない」
「え……?」
「あれはむしろ許してただろ。勝ちに執着するのは間違ってないし、日和も薄々はそういった勝ち筋があったって気づいてると思うよ」
「じゃあ何がダメだったの!?」
「うーん。俺が見た限りだとあの最後の”ドンマイ”ってのがダメだったかな?」
「え、あれダメなの!?」
「あんな辱めを受けてドンマイで済ませようとしたのがダメだったんだよへきちゃん」
「…………」
へきるはようやく理解した。
たしかに、自分がそっちの立場なら怒っていたと思う。私が勝ちたいからといって協力してもらって、でもひよくんに譲ることになって結局は勝てなくて、周囲に自分の裸を見せられた挙句ドンマイで済ませた……。字面にしてみるとちょっとこれは許せなくなってくる。
「……馬鹿だ! 私!」
「今に始まったことじゃないよ」
「お前意外と辛らつだな……。ま、わかったんならいいんじゃねえの? 改善してきゃ」
「そうそう。へきるは根明だからドンマイとか普通に言っちゃうのはいいけど、今度は状況を選んでな」
「私謝ってくる!」
そういって、へきるは席を立ち一目散にクラスに戻っていく。
だがしかし、クラスの中に日和の姿はない。近くにいたハルト王子に日和がどこ行ったか知らないと聞いてみると。
「学園長の補佐としてついていったが」
「なんですとーーーーーーー!?」




