リザルト
召集魔道具は、魔道具を持っている人物から一番近い人から順に、マーキングをした人たちを転送させるという古代の魔道具だという。
俺は転送される前に服を着なければ!と全力で駆け出したのだが。
横たわっている俺のもともとの体に手を伸ばした瞬間、ひゅんっと目の前の光景が移り変わった。そのまま素っ裸のまま、何もない地面に飛び込み、ずざざーとそのまま地面に突っ伏す。
「……ねぇ、なんで素っ裸なの?」
「な、なにがあったんです……?」
殺してくれ。いっそ殺してくれ。
俺は痴女としてこれから噂されるんだぁ……。俺は恥ずかしくて顔すら上げられなかった。回復魔法で回復はできる。それはいい。
だが、服は体の一部じゃないから再生は不可能。
「クソッ……! あんな頭おかしい奴だとは思ってなかったぜ……!」
「ハイコー、何があったんだよ」
「あん? てめえが負けた勇者がこいつの首刎ねてぶん投げてよこしたんだよ! あんな頭おかしい奴なら先言っとけやボケッ!」
「「「「は??」」」」
壬午と東たちがへきるのほうをありえない目で見ていた。
「回復魔法で回復したけど……怖かったし死ぬかと思った……」
「へきちゃんってそんなクレイジーな……」
「イカれてやがるぜ……」
「首刎ねてすぐに回復する日和も日和だけどな……。それ以上に頭切ってぶん投げるっていう発想がやべえよ」
「さ、さすがに……」
四人ともへきるにドン引きしていた。
「回復魔法で回復したから素っ裸なのか。とりあえず俺の上着使えよ」
「ありがとう。あとこっち見ないでくれると助かる。俺を隠してくれ。俺はもう心が折れた」
「わかった……」
「煩悩がある東が素直に従った……」
「だって首刎ねられてんだぜ……? さすがに今そういうこと言うのはちょっと……」
「まぁ、結果オーライ!」
じゃねえんだよボケ……。
全員、召集が終わったようで先生が結果の発表をすることになった。先生もちょっと声が上ずっている。見てたんだろうなぁ。
「え、えぇと、星16個獲得……。ヒヨリ・マキシマ……」
「うす……」
「そのままでいいから後で賞品を取りにくるように」
あとできっちり〆る。へきるはあとでみっちり説教してやる。勝つためだけに俺の首を刎ねてあんな剛速球でぶん投げやがって。マジで怖かった。すげー怖かった。ぶつかって死ぬかと思った。
ちょっとトラウマだよこんちくしょう。首を刎ねられたことなら一回あったからまだよかったが、あんな速度でぶん投げられて回転もかけられてって……。思い出しただけでもちょっと怖え。
「そして、星18個獲得、リヒター・アンデルセン」
どうやらそれでも星の数では負けていたようだ。
いいとこないな。不意打ちを食らうわ、素っ裸にされたまま転送されるわ、結局星の数で負けるわ……。俺なんもいいことねえ。
クソ……。異世界ってろくでもねえとこじゃねえか。
「……ひよくん、どんまい!」
「……あ?」
「あ……ひよくん……?」
「俺はお前のために星を集めておいて……こんな辱めを受けさせられた挙句、どんまいで軽く済ませるだァ?」
「あ……」
能天気なへきるにちょっと腹が立つ。
「へきる」
「な、なんでしょう……」
「しばらく話しかけんな」
しばらく、顔も見たくない。
いくら好きといえど、許せる限度っつーもんがある。頭を冷やす時間が必要だ俺には。そのためにはしばらく距離を置く必要がある。
「そんな……」
「あの日和のガチギレ……!?」
「見たことない……。割と菩薩かってぐらい怒ったことないから……」
「ひよくん、めったに怒らないけどやりすぎたら普通に怒るよ……。ガチギレひよくんは私でもちょっと怖い……」
実戦演習が終わり、俺は森の中に一人で入って自分の体から服を回収した。




