女子寮案内 ②
「ん~~美味し~~っ! 深みが違うー!」
食堂でご飯を食べて幸せそうなへきる。
たしかに歩いてみてわかったけど、俺たちに与えられた個室からこの食堂までは距離があるな……。わざわざ歩いて出向くにもちょっと面倒な距離だ。
まぁ、この広さだからな。学校でも3階から体育館まで行くのが面倒くさい距離だったりするし考えてみりゃ当たり前か。
「ふいー、ごちそうさまー」
「食べ終わりましたの? では、次に参りましょう」
「わかった……」
こいつ満腹で元気がちょっと減ってる。
食堂と来て、その次は大浴場だった。大浴場とはいえど、設備は王都のような感じのものではなく、複数の浴槽や、打たせ湯、サウナなどいろいろと温泉のラインナップが豊富だった。なんつーか、いいホテルに泊まったような感じの温泉。
「温泉は源泉かけ流しですの」
「温泉湧いてんのここ……」
「近くにある火山から湧いてる温泉を引いておりますわ」
「うわぁリッチ」
たかだか寮だぞ。
寮で源泉かけ流しって……。どんだけリッチなんだよ。
「その隣にはトレーニングルームがありまして、そちらは魔力に耐える部屋でありますの。魔法の練習や体の鍛錬などはそちらで行い、汗を隣の大浴場で流す……という方がたくさんおりますわ」
「考えられてるんだねッ!」
「そうだ……ってお前なんで脱いでんの?」
「温泉って言ったら入るっきゃないでしょ!」
すでにすっぽんぽんのへきる。
へきるは駆け出し、そのまま温泉にダイブしていた。ただの寮案内だから入る必要はねえし入ったらそれだけで時間食うだろ……。
カタリナ様も苦笑いだった。
「うちのへきるがすんません」
「構いませんわ。結構おてんばな方ですのね……。それにしても、日和様は元殿方ですのに裸を見ても取り乱しませんのね」
「まぁ、この世界に来て嫌って程へきるの体は見ましたから……」
「慣れですか。ふふ、女の子の体に順応して何よりです」
好きで順応してるわけじゃないんだけどな。
「カタリナ様は俺に引いてたりする? 元男だし……」
「いえ、不可抗力ですので、仕方ないと思いますわ。地球での日和様は知りませんが、今の日和様を見ているととても誠実な方なのだとわかります」
「それならよかった……」
「それに、見た目は同姓ですし、私は気になりませんわね」
それならよかった。
こういうのって嫌がる人もいるしな……。へきるがあんな感じだから他もそうだと思っちゃうんだけど、俺が男だと知ったら嫌だって人も少なからずいると思う。
「私たちも入りましょうか。寮案内はこの浴場で大方最後ですし、ここ数日の疲れをとるためにも」
「いいんですか?」
「構いませんわ。寮生ならこの大浴場はいつでも使用可能ですの。さ、わたくしたちも服を脱いで浸かりましょう」
というので、俺は服を脱ぎ、お風呂に入る。
ここに来るまでの間、川の水で体を拭いたりとかしかできなかったからか、体には汚れがものすごくついていた。
体を水で清めてからお風呂に入る。疲れて硬くなった体が温泉のぬくもりでほだされていく。
温泉ってこんなに気持ちよかったっけな……。
俺があまりの気持ちよさに溶けていると、突然胸を誰かに鷲掴みにされた。
「ひゃんっ」
「可愛い悲鳴だねひよくん」
「へきる……お前な……」
へきるが俺の胸を鷲掴みにしてニヤニヤしている。
俺は仕返しとしてへきるのその豊満な胸をつかんだ。
「おぅ」
「変な声出すな!」
「だってひよくんがいきなり触るからぁ……」
「俺のせいにすんじゃねえ! 大体なんでお前、こんな胸もあるんだよ! どうせ俺が女になるんだったらもうちょっとオトナな女性で胸も欲しかったわ! こんなロリ体形嫌だ!」
「可愛いのにねぇ」
「うるせえ!」
ってかお前が聖女であるべきだっただろうが! 俺が勇者だったら俺はもともとの性別のままだった気がする!
お前が勇者であるのが悪い!




