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俺が聖女で勇者が幼馴染で  作者: 鳩胸 ぽっぽ
オルフェリート王国召喚編
32/103

尋問

 倒した聖女と勇者を縄で捕らえた。

 へきるは剣を勇者の首もとにつきつけていた。


「ひよくん、生かしておく意味ないでしょこの人たち。どっちにしろ死罪確定じゃないの?」

「まぁ、そうだろうけどちょっと気になることがあって」

「気になること?」


 俺は勇者の前に立つ。

 目を覚ました勇者は冷静に俺らを見ていた。隣の聖女の女はがーがー喚きたてているがそちらは無視し、問い詰める。


「まずこんなことをした理由は?」

「……理由はただ簡単だよ。俺がてっぺんに立ちたかった。そんだけだ」

「優斗はすごいのよ! 本調子じゃなかっただけであんたらみたいな雑魚……!」

「……うるさいな」


 初代勇者、雨嶋 優斗に初代聖女の椛田かばた 麗奈れな

 あの剣の名前からエロ方面にろくでもないと思ってたがそうじゃないほうにろくでもない勇者。


「お前こそ雑魚の俺に魔法で負けてるから何も言えねえだろ」

「なんですって……! あんなの油断してたから……!」

「どう言い訳しても負けた事実は変わらないから負け犬の遠吠えとしてだけ聞いておく」

「そうだ。俺らは負けたんだよ。……ちっ、激動の時代だった俺らの時代に比べたらこんな生ぬるい時代なのに……こんなやつが召喚されてるとはな……」


 初代勇者のほうはだいぶ潔い。

 負けた事実を受け止めて、なにも足掻こうとはしていなかった。ここまで潔いと逆に不気味だ。死ぬ間際に何かしようとしてるような感じ。

 

「で、なんで初代の勇者が生きてんの?」

「こいつのスキルだよ。一度だけ蘇生できるんだ」

「そうなんだ」

「結構細かく決めることができてな。死んでから数日後に蘇生とか、生き返る日まで決められる。だが欠点としては、死んでしまった状態から肉体が変わらないこと」

「……それの何が欠点なの?」

「老衰とかで死んだら生き返っても体が老けたままだってことだろ」

「ああ。かけておいて死にませんでしたってなったら老衰で死んだあとまた蘇ることになる。それが欠点だ」


 随分とスキルのこと理解してるんだな……と思っていたが、女神からそういう説明でもされたんだろうか。

 激動の時代であった魔王が人間に敵対していた時代、女神も討伐してくれる奴を探して日本から連れてきた際、スキルの説明をしたんじゃないかな。というのが予想。

 

「スキルの効果とかどうやって知った?」

「転移する前に女神が教えてくれたんだ」

「え、私たち教えてくれなかったのに……」

「そもそも女神にあってないしな」

「そうか。まぁ、この時代じゃ必要ねえからだろ。そういうスキルは」

「かもね。必要ないなら言わないか」


 だから女神は俺らには会わずただただ転移させた。

 説明義務も今の時代にはないから。


「あの時代は誰もかれも強かった。今と比べて数倍も……。今のぬるい時代なら俺が上に立てると思ったんだけどな」

「ま、そんな甘くないってことだ」

「そうだな。俺らが間違ってた……。で、聞きたいことは以上か? これ以上聞いても俺らは何も答えられねえぞ」

「そうだな。じゃ、さよならだ」

「ああ、殺すならさっさと殺してくれ」

「の前に~?」

「ああ?」


 俺はさっきの発言を聞いてみる。

 蘇生魔法は一度だけといった。


「蘇生魔法は一度だけっていう発言がブラフである可能性は?」

「ねぇよ。蘇生魔法をかけるには呪文の詠唱が必須だ。こいつは喚き散らしてるばかりで呪文らしきもんを唱えてなかっただろ」

「たしかに。ただ、信ずるには値しないな。今までの説明はどれも嘘といえることもできる。俺らは蘇生魔法について何も知らないからな……。本当は無詠唱で出来て、喚き散らす演技をしてごまかそうという魂胆という考えもできる」

「用心深いんだな」

「また変に復活されてまた暴れられるのも面倒だからね。こういうのは徹底しておくべきなんだ」

「ちゃんとしてるな」

「それに……普通に教えてくれるの変じゃない? 死ぬことには変わりないんだから話さなくても死ぬんだし」

「そうだな。……まぁ、死ぬから話しても同じだろ。俺らは負けたんだ」


 初代勇者は笑う。

 国王がやってきた。国王は憎むような、憎悪の目を初代勇者に向けていた。

 王都の人たちも全員無事というわけじゃなかった。建物の崩落に巻き込まれて潰されて死んでた人とかもいた。王都をめちゃくちゃにした咎めるべき罪人。

 剣を突きつけていることにも何も言わない国王。


「国王様、裁定を」

「……今すぐ死罰を与えよ」

「かしこまり!」


 俺は勇者に問いかける。


「遺言は?」

「ねぇよ」


 勇者の首がへきるの手によって刎ね飛ばされた。

 身体から血が噴出し、力無く倒れる。隣にいる聖女に血が降りかかり、聖女は死にたくない、死にたくない!と泣き叫んでいた。


「死にたくないのは王都の人たちもだったよ。自分たちのエゴが許されて王都の人たちのエゴが通らないわけはないよね」

「やめてやめてやめてやめて! なんでもしますから! なんでもするからっ! やめて!」

「死ね」


 へきるは聖女の首を刎ねた。

 

「へきる……よく人を殺せるな……」

「私も狂ってるからね。ひよくんはこんな私に幻滅する?」

「……」

「だよね〜。まぁ……私案外人のことどうでもいいって思ってるからさ。ひよくんは知らないと思うけど、よく周りから冷たい女だって言われてたんだ」

「そっか……」

「あ、でもひよくんは大切に思ってるよ!? ひよくん死んだら後を追うくらいには!」

「それはそれで重い」


 やっぱ人の死には慣れない。

 へきるが殺した。つまり俺もそれに加担したことだ。こういうの、慣れていかなきゃな……。













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