襲来
勇者祭本番がやってきた。
俺は聖女の服に着替え、へきるは勇者の服に着替える。剣を腰に携帯し、俺はロザリオを首にぶら下げて、勇者の顔を見たがる人たちの前に姿を現そうとした時だった。
息を切らした騎士がやってきたのだった。
「た、大変です国王様!」
「どうした?」
「何者かが剣を持ち、暴れております!」
「なんだと!? エルゴとシャルドネを向かわせて対処させよ!」
「それなのですが、すでに二人とも交戦し重傷を負い……」
そういう報告があり、国王は渋い顔をしていた。
エルゴさんとシャルさんが重傷を負い負けた……? ただものじゃない気がするな。国王様もそれはわかってしまったらしく、どうすればいいか決めあぐねているようだ。
へきるは剣を握りしめる。
「じゃ、私たちでやろうよ、ひよくん」
「俺らで?」
「エルゴさんたちが蒔けるような相手なんでしょ。エルゴさんたちはこの国で一番強い人たちじゃん? その人たちが負けるような相手って私たちの出番でしょ」
「そうだけどよ……」
だがしかしだ……。
いや、この際四の五の言ってちゃダメか。今も暴れてるんだもんな。
「よし、いくぞ!」
「うん!」
へきると俺は騎士の人たちに案内をさせ、現場へと向かうのだった。
現場では返り血にまみれた男と、魔法をうって町を破壊している女の人が立っている。そして、現場には壬午と宇和島、文吾とみつの姿もいて、4人とも血を流して倒れていた。
へきるは4人を見て、手が震えている。
「壬午くん……みーちゃん……。文吾くん……みつちゃん」
「いやぁ、驚いた。まだ異世界から勇者呼ばれてるんだな。まぁ、でも雑魚かったけどな」
「そうね。あんたほどのスキル持ってないから負けてるのよ」
「だな! 俺って恵まれたわー!」
こちらには視線を向けず談笑している二人。
へきるは剣を握りしめ、向かっていったのだった。
「お、新たな勇者登場ってか? どうせこいつもスキルだよりだ。俺に攻撃はできねえよ!」
へきるは思い切り剣の峰でぶったたいたのだった。
「えっ!?」
「よくも二人を……ひよくん! 4人の回復!」
「わかってる!」
俺は回復魔法をかけようとすると、俺に魔法が飛んできたのだった。
魔法を防ぐ。が、結構強い魔力が込められていて、防ぎきれなかった。あの女の魔法か。結構洗練されてる気がする。
「あまり時間はかけられないな……」
「あら、時間かからないつもりでいるの? めでたい頭してるじゃない」
煽ってくる黒髪の女。
誰だこいつらは。この世界の人にしては珍しい髪色してるな。いや……考えても仕方ねえ。そういう余裕は今のこいつらにはない。
早く倒して……いや、倒させてくれるのか?
倒したところでこの魔法だ、すぐに出てくる。となると殺したほうが……いやでもな。
「……躊躇してられないか」
俺は結構な魔力を手のひらに集める。
その瞬間、女の顔色が変わった。
「なんつー魔力……! 本当にこいつ聖女か?」
「あっちの黒髪もろとも貫いてやる!」
俺は雷魔法を放った。
女は防ごうとしていたが、防ぎきれず体が黒く焦げる。一方、あっちの男は女がやられたことに見向きこそしたが、俺の雷は当たらなかった。
当たる前に霧散して消えたのだった。
「なるほど、そういうスキルか……。へきるの攻撃は当たってたから察するに……魔法を防ぐスキルってとこかな」
「ちっ……あんまり情報与えてねえのに……」
「回復」
「なっ……あんな馬鹿みたいな魔力の魔法をうっても回復魔法使えるのか!?」
「よそ見してる暇あるの?」
へきるは剣を思いきり振り切った。
なんつー身体能力……ってかへきるってなんかすごい身体能力高いよな……。
……ん?
主人公が強すぎてすぐに退場しちゃった……




