失われた相棒
俺は女の服を着させられる。
恥ずかしいし、なんでこんな白い服なんだ。汚れ目立つだろ。
俺は恥ずかしさで少し動きが固くなってしまった。
「ひよくん可愛くなったねぇ〜」
「うるせえ……」
へきるが俺の部屋に遊びに来ていた。
俺らは異世界に召喚された。それはいい。元の世界に戻れない。未練は山ほどあるし、この世界ではスマホなどの電子機器がないのが嫌だというのと、俺らの母さんたちは心配してるし、壬午はものすごく混乱してるだろう。
「日和様、へきる様。夕食のご用意ができました。こちらの部屋に運びましょうか? 個別で食べますか?」
「一緒に食べよっ! こっちに全部ー!」
「お気楽だなへきるは」
「来てしまったもんは仕方ないじゃんね!」
「不安とか……あっちに残ってる母さんたちの心配はないのか?」
「あるっちゃあるけど……。戻れないって告げられたらねぇ……。そりゃ、こうなるんだったら別れの言葉一つや二つ言っておくべきだったなぁってのは思うよ?」
へきるは淡々と述べる。
こいつって意外とドライな性格なんだよな。図太いのは俺も見習わないとと思いつつ、運ばれてくる食事に目を向ける。
肉。めっちゃ高級そうな。
「うわぁ、美味しそー!」
「……」
「いっただっきまーーす!」
へきるは肉にかぶりついた。
俺も食べてみる。肉汁が溢れ出てくる。肉が柔らかい……。食べやすい。
それに、極め付けはこのソース。上品でありながら、深いコクがある。
「美味い……」
「ありがとうございます。お口にあったようでなにより」
「白飯欲しい〜!」
「いや、これはパンだろ。このソースをベッタリつけてな」
俺はパンを手に取り、皿のソースをパンで拭う。
やっぱパンと合う。
「あ、私もやる! ちょ、パンちょーだいっ!」
「あ、そんな身を乗り出すな……」
その瞬間、机の足が折れ、べっとりと皿が俺の服と体についた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫……。すいません、机壊しちゃった……」
「いえ、勇者様と聖女様にお怪我がないようならば……。ただ、お二方のお召し物が……」
「あー」
服にはべっとりとソースがついている。
「ご入浴なさいますか? お湯は沸いております」
「お風呂入る〜……」
「おう。先行ってら」
「聖女様もどうぞ! 王城の風呂は大変お広いので二人なら余裕でございます!」
「えっ」
俺は使用人の人に連れられる形で浴槽に来た。
使用人の人は風呂の世話をしようとしてきたが、流石にやめておいた。ちょっとそれは申し訳ないってのと……。
「……さすがにお風呂一緒なのは久しぶりだね」
「ガキの頃以来だけどよ……」
「……ひよくん、男子だもんねえ」
「元、な……。だけど……やっぱ恥ずかしいだろお前。俺ここにいるから先入ってこいよ。見ないでおいてやるから」
「でも遅いと使用人さんが心配するよ?」
「…………」
「ねえ、子供の時みたく洗いっこ、しよっかぁ」
へきるはにへらっと笑う。
「力強くて泣いても知らねえぞ」
「そんな幼女スタイルで力強いって言われても!」
「そういや俺幼女じゃん……」
もしかして一番恥じらうべきなのは俺なのか?
俺は自分のものがついていた場所を見る。そこにはやはり相棒はなかった。
さらば、15年付き添ってきた相棒よ……。悲しい気持ちが少しだけ沸いてくるのと、ちょっと自分のとはいえまじまじとみたのはこれが初めて。思春期には刺激が強い。
「うおっ、鼻血……」
「自分の体みて興奮してやんのー!」
「う、うるせえ! 思春期の男の子だったんだぞ! こういうのは人並みにあったんだよ!」
「へんたーい!」
「いいから入るぞ!」
俺は自制の心を保ち、中へと入った。