剣のデザイン
とんでもない罠だったぜ……。
この世界での言語も日本語だが、あれの意味とかはまだ知られてなさそうだ。知ってたらあんなふうに販売されねえしな……。
ひとしきり王都を堪能し、今日は王城に帰ることにした。
「じゃ、俺ら宿とってるから!」
「来賓って扱いじゃないの?」
「そうなんだけど、ほら、こういうのってよ……やっぱ宿に泊まるのが常じゃん? ドラ〇エ然り……。そういう定番を体験したいって言ったからよ、王都で宿をとってんだ」
「ゲーム脳かよ」
「ゲームと思わなきゃこんな地球より生命倫理が欠如している異世界を生き抜いていられるかってんだ」
「あー……」
この世界は魔物もいるし、人は地球よりは死にやすいか……。
実際、以前俺も死にかけたしな。首切られて。回復魔法で即座に体を再生したからぎりぎり助かったが常時かけてないと間に合わなくて普通に死ぬと思う。
魔法は自分の意識があるうちは使える。だけど首を斬られて意識があるのは20秒とかって聞いたしな……。パニックになって使えなさそうだ。
「んじゃな! 明日は俺らいろいろとめぐってみっからよ! 案内はいらねーぜ!」
「おう。またな」
宇和島、壬午は手を振って走り去っていった。
俺らも王城の中に入っていく。ただ今帰ったと告げると、眼鏡をかけた大臣がやってきたのだった。
「勇者様、聖女様。少々お話が……」
「……追放!?」
「えっ」
「お前夢見がち過ぎ。絶対勇者祭のことだろ」
「おぉ……知っておられたのですね。ならば話は早いです」
少々お話がって言われて追放って言葉が出てくるあたり期待しすぎだろ。
追放する理由はないし、するにしても勇者祭が控えている今、勇者を追放したっていう事実は外聞がものすごく悪くなるし。
それに追放ものの小説はいきなり追放って言ってくるもんだぜオイ。
「勇者祭では毎年は勇者が不在であるため、形式的なものではありましたが、今年は勇者が降臨したので人々の象徴となる勇者様を中心としたパレード的なものを行いたいのです」
「パレードって……夢の国の奴的な?」
「夢の国?」
「この国の人にはわからねえよ。パレードって勇者の格好をしたへきるが街を練り歩くっていう認識でいいんですか?」
「はい。ただ、いろいろと考えることがありまして……勇者の鎧のデザインは以前お渡しした正装が鎧の役割となるのですが……」
「それ以外に何か必要なものが?」
「剣です」
「剣」
「剣も、勇者を象徴するもの。勇者に剣はつきものですし、そんじょそこらの鉄の剣を勇者の剣と言い張るのはちょっとということでして、デザインを考え、鍛冶屋に発注いたします。勇者様が望むデザインがあれば取り入れますが……」
勇者の剣か。
たしかに普通にそこら辺に売ってる鉄の剣じゃ味気ないか。勇者祭だもんな。
「デザインかー」
「どういったものを取り入れたいかなど考えていただければなるべく可能な形で要望に沿い、デザインを発注いたします。機能性に優れさせるもよし、実用性を重視せず見た目にこだわってもよしです」
「実用性はいるんじゃないですか?」
「そうでもありません。二代前に召喚された勇者様は剣ではなく、魔法をメインとして戦っていたそうです。必ず勇者様は剣で戦わなくてはならないわけではございませんので」
「あ、なるほどぉ……」
たしかに魔法をメインに使う勇者がいてもなんもおかしくはない。
その人にとっては剣は不要なものだから、実用性を重視せずに見た目だけ勇者の剣っぽくすればいいってことだからそういう問いかけもするようになったのか。
「そうだなぁ。紙あります? 私が欲しいデザイン思いついたので!」
そういって、紙を受け取りその場でデザインを描き起こしていた。
へきるが描いたのはビームサーベルみたいな感じの……。
「ビームサーベル!」
「すいません、無理です」
「えぇ!?」
「あたりめえだろ……。持ち手部分はともかく、ビームの部分どうすんだよ」
「あ、そっかぁ。じゃあ……こういうの!」
第二希望も出してきた。
「こちらならば……」
「それで!」
大臣さんは紙を受け取り、さっそく発注すると言って行ってしまった。
「どんなのにしたの?」
「魔法少女のステッキみたいな感じの!」
「あー……」
形だけならビームサーベルよりは再現可能だな。




