勇者 安形壬午
志島を呼んだのは俺の世界で俺の友達でもあった……。
「安形くん? 奇遇ー」
「お前らもこの世界に……俺の目の前で召喚されたんだもんな」
安形 壬午。
俺らと同じ高校に通っていた腐れ縁の友人。
「ってことはお前が聖女として召喚されたんだな。で……一緒に飛ばされたはずの日和はどこだ? あいつと一緒に飛ばされたんだから一緒だろ?」
「あー……」
へきるが俺を指さした。
壬午と目が合う。壬午は目をぱちくりして、俺をじっくり見ていた。
「……俺が、一応……巻島 日和……」
「え……」
壬午は固まっていた。
「あ、へきちゃんじゃん! へきちゃんも飛ばされたってマジなんだ!」
「あ、みーちゃん! おひさー!」
「久しぶりー! いやぁ、知ってる顔がいて心強いよー。で、うちの壬午は何で固まってんの?」
「……紹介するね、私の幼馴染のひよくん」
「えっ」
俺のクラスメイトで壬午の彼女の宇和島 美咲。ノリのいい体育会系女子っていう感じで壬午と幼馴染の関係でもあった。
壬午がなぜ固まっているか、想像がついたらしい。
「どぅええええええええええ!?」
「嘘だろオイ! お前なんで女の子になってんだよ!」
「い、いやぁ。へきるが勇者として召喚されて、俺が聖女として召喚されて……男で聖女っておかしいから多分それで女の子になって……」
「たしかに聖女の役職の男の人っておかしいけど! マジか! 男が聖女に選ばれたら女の子に変えられんの!?」
二人が驚いていた横で、王子たち二人も驚いていた。
「……ヒヨリさん、元の世界では男の子だったんですの?」
「はい……」
「……こういうケースあるんだな」
「聖女として選ばれたら女の子に……。なんていうか、ものすごくファンタジーですわね……」
ですね……。
二人が少し落ち着き、宇和島が俺に近づいてきて、俺の股間に手を当てていた。
「まじでない!?」
「確認の仕方! っていうか壬午たちも勇者として召喚されたんだな」
「お、おう。アルスラン皇国にな……。いい国だった。海に面しているからめっちゃ魚食える」
「そうなんだ……」
「お前こそ……その、女の子になってどうだ? 初めて見た時どうだった?」
「聞くのがそれかよ。初めて女って気づいたときにも見る余裕なかったよ」
「なんでだ?」
「なんか知らないけど森に転移させられてて巨大な蜘蛛に追いかけられてた」
「わぁ今際の際」
むしろ自分が女の子で驚いてる余裕がなかった。
女の子になってるって気づいたときにはすでに追いかけられて死に物狂いで逃げてた。
「お前異世界に来て災難な目にしかあってないな」
「だろ? お前も聖女として召喚されれば面白かったのに」
「俺は勇者だよ残念! 俺も女の子になってみたかったなー!」
「いいもんじゃねえよ」
「でも同性っていう理由で志島とお風呂とか入れるじゃん」
「……まぁそれは」
確かに入ってるけども。
「うーん、まぁ、巻島くんは壬午と違って誠実な人だったし見られてもいいかもね! で、おっぱいのほうはどうよ? 堪能した?」
「いや、俺見ての通りロリ体形だし……」」
「ないか。残念!」
宇和島も変なところで変態チックだよな。
「さて、俺たちはそろそろ行こうと思う」
「あ、はい」
「お邪魔しましたわ」
王子たちは部屋から出ていった。
聖女たちは俺らに任せるってことか。
「よし、日和! この王都を案内してくれ!」
「へきちゃんもお願いね?」
「合点承知の助!」
「……つっても俺ら魔法の練習とかであまり出歩いてないから案内できるところ限られてるけどな」