お風呂場エンカウント
魔族三人を魔王に引き渡した。
ヴォルテ様は深々と頭を下げ、魔族の所業を謝罪、今回火災にあった村の損害を全て補償するということを交わしたのち、魔族の国へと戻っていく。
「事件解決! 平和が一番だね!」
「そうだな……」
こいつはこいつでチートスキルを探すのやめてるしな。
あれからもへきるは毎日コツコツと練習しているようだ。魔法を。
へきるは武器に魔法を纏わせることも覚えたのだとか。覚えると成長早いんだよなこいつ……。
「でさー、ひよくん」
「なんだよ」
「もうすっかり女の身体に慣れたね?」
「えっ……」
「私とお風呂入るの抵抗しなくなったしー?」
へきるは俺の背中を流しながらそう言ってきた。
そういやそうだ……! もう俺自分の身体になんとも思ってないどころか受け入れてる……!?
へきると風呂入るのも日常になってきてボヤけてしまってたがよくよく考えると同性じゃなく元々異性……。
「お、俺は男の子俺は男の子……」
「そう暗示をかけなくてもいーんだよー? ふふ、女の子同士だからねぇ。何も恥ずかしがることはないよねぇ」
「お、俺は男なんだよ……!」
「否定にも力が入らなくなってきた……。可愛いっ」
「うるせえっ!」
くそ、否定しようにも俺の身体が否定を否定してくる。
そもそも女であると見た目で証明されてしまってる以上、俺は今は生物学的には女の子なのだ。
「もう上がる!」
「えー」
俺はタオルで前を隠しながら脱衣所の扉を開くと。
ちょっとショタのような感じがするイケメンと目があった。しかもお互い全裸。
相手の局部を見てしまい、顔が少し赤くなっていくのがわかる。
「きゃっ……」
「ご、ごめん! まさか人が入ってるとは……。今出るっ!」
「…………」
びっくりした。ちょっとビビった。
こう、男って言われると少し恥ずかしいっていうか……。
「思いっきりきゃって言ったね」
「条件反射……」
「"うお"でもないあたりもう言い逃れはできないねえ」
へきるはニヤニヤしながら俺を笑っていた。
我ながらなんて恥ずかしいことをっ! 穴があったら入りたいっ!
俺はいそいそと風呂から上がり、身体を拭いて服を着る。
女物の服を着るのも手慣れてしまったものだ。悲しきかな……。この世界の服は俺らの世界の服とは違えど割と動きやすいから助かってるが……。
へきるも上がったようで全裸で牛乳を飲んでいた。
「ぷはーっ! 風呂上がりの一杯は格別だねぇ!」
「銭湯みたいになってんな……」
「コーヒー牛乳があればねぇ。あとで開発して世に広めるか」
「フルーツ牛乳も頼むな」
「昔からフルーツ牛乳だよね。あれ美味しいの?」
「美味い」
俺とへきるは着替え終わり、外に出る。
それにしてもさっきの人……見たことのない人だったな。と思いながら部屋に帰り数分後。
突如ノックされたかと思うと、侍女の人が第一王子が私たちに会いたいという。
そういや今まで会ったことがないな。国王様とは会ってはいるが王子と面識がない。そもそもいたのかって感じだ。
わかりましたと告げて、中に入ってきたのは二人。片方は入ってきたかと思うと深々と土下座して、片方はドレスの裾を摘み挨拶をしてきた。
「初めまして、聖女様。わたくしはハルト様の婚約者であるカタリナ・トパーズと申します」
「ど、どうも……」
「この度は殿下が大変なご無礼を働き申し訳ありません」
「いえ……」
「すまなかった……」
会ったことないと思ってたけどあの風呂場の全裸の人が王子だったのか。
「聖女殿、勇者殿。深々とお詫び申し上げます……」
「まあ裸くらい減るもんじゃないし……」
「勇者様。女性がそんなに易々と身体を見せていいはずがありません」
「は、はい……」
うわ、カタリナさん厳しそうな人……。
「君たちのことは父上から聞いているよ……。ようこそこの世界へ……」
「あの……顔をあげてください……。怒ってないですから……」
「ありがとう……」
王子様が顔を上げる。
うわ、イケメン!




