首斬られひより
魔族。
魔王が治める領地、魔族領に住む種族であり、兼ねてから人間と敵対してきた過去があるらしいが今は違う。
当主の魔王が人間と友好的であり、今の魔族も人間に対して苦手意識はあるものの歩み寄ろうとする人が多いらしい。
が、今でも人間を殺そうとする魔族もいる。
「そういう魔族であっても勝手に殺すとなると軋轢を生みかねない……。だからこそ厄介。今の魔王が友好的であると言えど、同胞を殺されて納得するかって話だよ」
「なるほどぉ……」
「それに、現実的な話で言うと魔族は手強いからね。下手に犠牲者を出すよりかは私が戦った方が早い」
「だから師団長のシャルさんが向かって……」
シャルさんの魔法の実力は師団長に選ばれるだけある。
「さて、なるべく生け捕りだ。勇者ちゃんは殺さない程度に剣で戦ってね」
「はい!」
「魔族は3人……。実力的には二人とも申し分はない。死なないようにね」
「はい!」
現場に到着した。
騎士たちが盗賊団のアジトに突撃していき、盗賊団を拘束し始める。
俺たちは魔族を探すことにした。
ヴォルテさんと同じような見た目。あからさまに人間ではない見た目の奴を探せばいい。
魔力を辿れば1発か……?
「……いや、探す手間が省けたか」
「うーわ、これ殺すの?」
奥からおっぱいを揺らして歩いてくる魔族の女。
俺はとりあえず拳を構えたのだった。だがその瞬間、俺の首に剣が飛んでくる。
剣は俺の首を刎ねた。だがしかし、すぐに俺の身体は再生する。
「不意打ちで首刎ねても死なないってあんた何!?」
「あっぶねえ! 常時回復魔法発動しといてよかったぁ!」
意識さえあれば回復する。
「あんたありえない魔法の使い方してるわね……! 不死身かよ……」
「不死身だよ。あまり長引かせるのもアレだから手っ取り早く仕留めるか!」
俺は覚悟を決めた。
俺は女の魔族めがけて雷の魔法を放つ。
「魔族に魔法? 馬鹿馬鹿しい、人間如きが……ってどんな出力してんのよー!?」
雷は女魔族に当たる。
魔力で抵抗され少しは打ち消されたようだが、それでもなおあまりあるダメージ。
気絶させるには十分な電撃だった。俺の勘で放った雷はなんとか気絶程度で済ませられたようだ。
「終わり! あとはこの魔封じの腕輪をつけてだな」
魔封じの魔法がかけられた腕輪を魔族に嵌めて引きずって……と思ったが今の俺はスッポンポンだった。
身体は再生出来たが衣類までは再生できない。俺の足元には俺が着ていた服を着た俺の身体が転がっている。
そうだよな、身体は再生したからあるが、元々の体は無くなるわけじゃない。
それにしても白い服に血液は目立つな……。
俺は俺の身体から服をひっぺがし再び着用するのだった。
「聖女様、無茶な戦い方を……」
「すげえ、首斬られて一瞬で再生して蹴散らしやがった……」
「化け物か?」
化け物て。
俺は魔族を騎士に受け渡し、へきるの方を見に行く。へきるも既に勝負が喫し、へきるが剣を上に掲げていた。
「終わったようだね二人とも」
「シャルさん! 勝ちました!」
「だろうね……。それにしても聞いたよさっき。ひよりちゃん。首斬られて一瞬で身体を再生したんだって?」
「え、まぁ……」
「普通それで死ぬよ。君の反射神経は怖いね」
「反射神経じゃないですよ? ひよくん、常時回復魔法を発動してますから」
「なっ……!」
それを聞いて驚いていた。
「さすがにこんな危険地帯にいる時だけです。雷魔法との併用もまぁ出来るみたいなんで……」
「……化け物か? 二つの属性の魔法を併用するのも神業的な技術だ。私もやっと最近できるようになったんだがねぇ。それに常時発動……。なるほど。斬られても常に発動しているから再生もすぐに……。膨大な魔力だからこそ出来る芸当だね」
「それよりひよくん首斬られたの!?」
「うん。俺の身体が転がってるよ」
二人とも俺にドン引きしていた。
「君センスありすぎるよ。正直な話、勇者ちゃんには悪いが君が勇者だと言われても遜色ないくらいにはおかしなことをしてると気づいて欲しいねえ」
「首斬られて生きてるとか信じられない……」
なんでバケモノを見るような目で見てくるんだ。
首斬られても数秒は意識あるみたいですね。
意識あるなら魔法が使える




