魔法の特訓 ①
火事の犯人も特定できないまま、次の日を迎えた。
俺らはシャルさんに呼び出されて中庭へと向かう。
「シャルさん、村の火災のこととかはいいんですか?」
「それは私の部下に調査させてるよ。いまだに原因はわからずじまいだけどね……。それより! 私はあなたたちに魔法を教えに来たんだ」
「俺たちに?」
「そう。異世界から来た君たちは魔力を無駄に持て余してるだろうからね。まず魔法について教えてあげる」
シャルさんが魔法講座を開くらしい。
さすがのへきるも魔法を使ってみたいのか、今回はやる気のようでめちゃくちゃ真剣なまなざしで聞いていた。
「魔法って言うのは属性があってだね? それぞれが得意な属性がある。火、水、風、雷、光、闇……。回復魔法は光属性魔法に含まれるんだよ。光属性魔法はオーテムから聞いてる通り、聖職者についているもの、ついていたものにしか発現しないからこの際教えないでおくけど……。それぞれ自分の魔力の属性を知っておくべきなんだよね。基本、一人一つの属性! まれに複数の属性を持つ人がいるんだ。私や聖女様がそれに該当するね」
「え、俺二つの属性あるんですか?」
「光属性魔法は唯一、後天的な属性だから必然的に二つ持つことになる」
「なるほど」
光属性魔法には回復魔法が分類されて、回復魔法は聖職者にしか発現しないというから後天的か。先天性だとたしかにおかしいもんな。
つまり、俺は後天的に光属性魔法を手に入れてるから二つの属性を持っているってことか。
「測る装置も今持ってきてるから、二人とも手をかざしてね」
「私からやりまーす!」
へきるは装置に手を当てていた。
装置が紫色に染まっていく。
「うん、闇属性だね!」
「なんでーーーー!?」
「闇属性は珍しいよ? よかったじゃないか」
「闇属性の勇者て……」
へきるはどうやら闇属性の魔力らしい。
性格的には割と太陽の子なんだけどな。俺も続いて手をかざす。装置は黄色に光ったかと思うと、今度は白い光を放った。
二つある場合はこういう反応するんだな……。
「雷属性か。いいの持ってんじゃん。ちなみに私は水と風だよ。ま、それはさておき……魔法の使い方だね。魔法っていうのは自分の属性の魔力を具現化して、その属性のものを呼び出すんだ。水なら水を、火なら火をってね」
「じゃあつまり俺は雷を呼び出せるってことですか」
「そういうこと! 呑み込み早いね! 魔法って言うのはイメージなんだよ。雷を出すイメージをしてみて」
というので、俺は少し想像してみる。
手に雷を集め、放つイメージで手を振ると。ものすごい膨大な魔力の稲妻がシャルさんめがけて放たれてしまった。
「一発でできるの!? この魔力はちょっとまずいね……! さすが聖女っていうか……くっ」
シャルさんに直撃し、シャルさんの服が少し焦げていた。
「一発でできるって天才かー? しかも威力も申し分なし……っていうかオーバー。私も防ぎきれなかった……。まじで感電した……」
「すんません……できると思わず」
「だよねぇ。勇者ちゃんもやってみよう! 闇属性は闇をイメージするといいよ。闇で対象を包み込む感じで」
へきるは目を閉じ、イメージして俺のようにやってみているが、小さい闇の玉が手のひらから出たかと思うと、そのままヘロヘロと地面に落ちたのだった。
へきるってこういうの不得意だからなぁ。運動は昔からできるんだけどこういうのは……。
「私もひよくんみたいに派手にやりたいのにできない……」
「初心者はそんなものだよ。聖女様がおかしいのさ」
「……」
そんなずるいという目で見られましても。