村に起きた火事
村の火災での死者は奇跡的に0人だった。
ひどい火傷を負った人はいたが、全員治療し、今は村の復興を頑張るようだった。
騎士たちは原因の究明に忙しなく動いている。
村一つが焼けるほどの大きな火災……。普通のことじゃないよな。
家一つ燃えたらその家を壊して鎮火すれば済む話だし、村の火事はどうも普通じゃない気がする。俺の考えすぎだろうか……。
「難しい顔しちゃってー! なーに考えてるの?」
「いや、先日の火事のこと……」
「まだ気にしてるの?」
「いや、村一つが燃えるような火事って普通かと気になってな」
「あー……。事件の匂いだね?」
「……だな」
へきるはそういうとノリノリで準備し始めた。
どこへ行くつもりなんだお前。
「こういうのは裏で誰かが蜘蛛を引いてるんだよ!」
「それを言うなら糸を引くな。ってお前まさか村に行くつもりか?」
「そー! 騎士たちの手伝いをしなくちゃね! あと火災の謎を突き止めなくてはならないのだよ。名探偵へきる様の手でね!」
「探偵ごっこかよ」
「ほらひよくんも行くよ!」
「へいへい……」
俺はへきるに連れられて昨日火事があった村に向かうのだった。
村の家屋は全焼し、きれいさっぱりだった。騎士たちが燃え尽きた木の残骸を退けている。
「聖女様、どうかなさったので?」
「いや……俺もちょっと気になってきたんです。村一つの火事ってちょっとおかしいですし……」
「そうですか……。私たちでよければ喜んで協力致します」
「それじゃ……火災の原因ってわかったりしてますか?」
「それがわかっていないんですよ。気が付いたら火がついていて……」
気が付いたら火がついていた、か。
「なにか火を扱っていたりとかは? 火災の発生源はあなたの家からですか?」
「いや、村の人たちの家から一斉に火が出たんです。慌てて逃げだして……」
一斉に火?
そんなタイミングよく火が出るもんか? いや……それはない。どんな奇跡的確率だ。一棟から火が出て広がり、全焼しましたならともかくとして……。
「火が出たところになにか燃えやすいものとか……」
「火が出たところは物置だからなぁ。あそこには燃えやすいものはわんさかありますし……」
「うーん。なんかいたって普通だね」
「物置には何があったんですか?」
「農作業用の鍬だろ? 雑草を刈るための鎌に……村に来る行商人から買った小麦粉とか」
「粉塵爆発!」
「んなわけねえだろ……。条件が整ってねえよ」
「そっかぁ」
怪しいものはないようだった。
村の人に今度は物置の場所に案内してもらう。物置も燃え尽きており、物が全部焦げていた。
「ん? 聖女様も調べに来たんだ」
「あなたは?」
「私かい? 私は魔法使い師団第一部隊の隊長、シャルドネ。シャルちゃんって呼んでくれて構わないよ」
「シャルさんもここが気になったんですか?」
「気になったっていうか、怪しげな魔力の残骸が残ってるからねぇ」
魔力の残骸……?
「あ、聖女様はわからないか。そうだな……。聖女様、よーく魔力を探知してご覧。そうすると、変な魔力があるでしょ?」
「探知……?」
魔力の探知……。
俺は目をつむり、魔力を感じとってみる。すると、たしかに小さな変な魔力が物置に会ったのだった。
「たしかに」
「え、一発でできるんだ……。すご」
「え、普通出来ないもんなんです?」
「みんな自分の魔力に邪魔されて探知できないんだよ。自分の魔力を理解してないからね」
そうなのか……。
魔力には個人によって違うように感じるからそれでなんとなくわかるって感じなんだけど。
「この魔力、普通の農村にあるようなもんじゃない。失礼ですけど、この物置にはなにか変なもの置いてませんでしたか?」
「いや……特に変なものは置いてないですね。農作業用の道具とか備蓄するための食糧とかしか置いてないです」
「うーん、じゃあこの魔力の正体はなんだ? この魔力が火災の発生源としてみていいけど……」
シャルさんが頭を悩ませていた。
「あ、窓とかどこかから投げ込んで一斉に発火させたとかは! できそう!」
「窓……。物置に窓は?」
「ありました。湿気がこもるから窓を開けて換気しとりましたが……。多分どこも開けてたと思います」
「窓から投げ入れた可能性が大きいな。勇者さん、ナイス考察!」
「えへへ……」
それなら誰でもできるから容疑者がな……。




