ずっと一緒だよ
勇者へきるはオルフェリート王国に凱旋した。
国王と謁見し、勇者へきるは王国を破壊したバツとして勇者の称号のはく奪。勇者から一般人へと格下げになったがへきるはそんなこと気にした様子もない。
「おかえり、へきる殿」
「ただいまです。あとごめんなさい」
各方面への謝罪を済ませ、今度はへきるの生活が始まった。
まずは金の工面。金をどうにかして用意するということになるとまずは冒険者だった。勇者でもあったことと、ミツ、文吾たちとも知り合いということ、そして小野瀬も冒険者になっていたらしく、四人でパーティを組んだところ最速でSランクに到達していた。
「どりゃあああああ!」
「へきる。俺が宿ってる剣使えよ」
「だめ! 折れたりしたらひよくん消えちゃうかもしれないし!」
「じゃあ持ち歩くなよ」
「ひよくんと一緒にいたいもん」
へきるは新たに銅の剣を購入し、俺の剣を背負いながら銅の剣というなまくらで危険度の高いモンスターと張り合ってることから冒険者の間ではナマクラのへきるというあだ名で呼ばれていた。
銅の剣は切れ味もそこまでよくはなく、斬るというより強引に引き裂く感じなのだが、へきるのフィジカルではなんでも斬れる。
「まさか精霊として蘇るとはねぇ……。へきちーが元気になったようでよかったけどさ」
「で……文吾とミツ。気になってたんだけどミツのお腹膨らんでない?」
「……」
超えたなお前ら。
ミツってもともと男だろ……? いや、今は生物学上女の子だから当然っちゃ当然なんだけど……。もうこれ以上つっこまないでおこう。
「妊娠してるなら休んでいいよと言ってるんだけどね」
「あまり激しい運動はダメだよー?」
「…………」
「…………」
俺と目を合わせようとしない。
いいもんね。俺はそういうのないから。ちょっと経験してみたかったって言うのは秘密だけど……。だって気になるじゃん……。俺も性欲はないわけじゃないから……。
「ったく、俺がいない5年でお前らめちゃくちゃ変わったな……。むしろ俺だけ5年前のままなんだけど」
へきるも俺と離れて一人になっていたから随分と逞しくなっていた。
女神さまも言う通り、へきるのほうが本当に勇者の素質があるでやんの。逞しく成長するなんて俺はまず無理。俺は変化を求めないたちだから。
性別は変化しちゃってるけど……。それはまぁいいとして。
「へきる、敵が来てんぞ。油断すんなよ」
「ふあー……あい」
へきるは欠伸をしながら剣を構えた。
そして、そのまま敵を切り裂く。
「5年前よりフィジカルもだいぶ向上してるんだな」
「そーお? そういう実感はないなー」
「だよな。そういう変化は気づけないよな」
一人だったもんな。
「へきる、一人は嫌だったか?」
「うん。いやだった」
「そっか。じゃ、これからはずっと一緒だな」
「うん。ずっと一緒。ひよくん」
楽しく書きました。
趣味全開で書いてますので、終わるときも基本唐突。でも楽しい。
行き当たりばったりで書いてますので次回作もよろしくお願いします。




