ご無事ですか聖女様
同姓同名の声優様がいたため登場人物の名前を少し変更しました。
椎名から志島になってます……。
俺は今、見知らぬ森の中を全力で駆け抜けていた。
「なんなんだよぉおおおお!」
今現在、見知らぬ森で見知らぬ生物に追いかけられていた。
見た目は蜘蛛なのだが、サイズがおかしい。タランチュラみたいな手のひらサイズではなく、もっとでかい。2mはあるだろう大きな蜘蛛が木を薙ぎ倒しながら俺を追いかけてきた。
「はぁ……はぁ……。なんか知らねーけど女にもなってるしよ……。なんなんだここは一体!」
時は少し前に遡る。
俺の名前は巻島 日和。高校生の男の子だ。
幼馴染の志島 へきると通学路を歩いていた。
「ねえひよくーん。毎日毎日こう、変わり映えもしない道歩くの嫌だよねぇ」
「いや、お前方向音痴なんだし決まった道の方がいいだろ……」
「だけどさぁ、たまには遠回りとかしても面白そうじゃない?」
「……俺は行かないぞ」
「えぇー!? ひよくんいないと迷って帰れないんだけど!?」
他愛もない話をしながら、何の変哲もない通学路を歩く。
別にへきると付き合っているわけではないが、側から見れば彼氏彼女の関係に見えているらしい。こんな美人の幼馴染をそれで守れるのならそういうままでいいが。
「ん? アレなんだろひよくん」
「アレって?」
「アレだよアレ」
へきるが指を指したのは壁に描かれた魔法陣みたいなもの。
普段からこの道を歩いているが、この壁にこういう落書きがされていたとは気づかなかった。
「魔法陣だな」
「ねー? こんなのあったんだ。気づかないもんだね」
「だな……」
「おーっす、二人とも。今日も仲良いね!」
と、背後から肩を叩いてきたのは俺の友達の安形 壬午というやつでいつも冷やかしてくるやつだった。
「なにしてんの、ここで?」
「いや、壁の落書きを見てた」
「落書き? どこにあんの?」
「いや、あるだろ」
「いや、なんもねえけど」
「いや、ここに!」
俺は壁を叩いた。
その瞬間、魔法陣が光り出す。
「えっ?」
「ふぇ?」
突然、俺らの身体が浮き始めた。
俺とへきるが宙に浮く。
「なにこれ!?」
「何が起きてんだ!?」
「わかんねーよ! ちょ、なんだこれ!?」
「す、吸い込まれるぅ〜!」
「とりあえず捕まれ、お前ら!」
俺はへきるの手を掴もうとしたが無理で、吸い寄せられるように壁の方に向かっていく。
壁の中に俺の身体がどんどん入っていった。俺は壬午の手を掴もうとしたが、スカッと空振った。そして、そのまま壁の中に吸い込まれていったのだった。
ってな感じで気がついたら森の中にいた。
しかも、女の姿で。びびって叫んだらこの蜘蛛を引き寄せてしまったってわけなんだが……。
「なんなんだマジで! まずここはどこで! こいつはどういう奴で! マジでわかんねぇ!」
俺は必死に逃げていた。
ここまで全力疾走したのは久しぶりだ。マジで命の危機を感じた。
すると、突然上から誰かが落ちてくる。その瞬間、蜘蛛が真っ二つに斬られていた。
「えっ? 人?」
「ご無事ですか、聖女様!」
「え、誰?」