#弐:マホーショージョ、怖っ
新たな国へと旅立った目的。
それは、元・妖精さんたちの肉体を変化させた"この自分のオリジナルの魔法?魔力?魔術?というものが、一体何なのか?"という疑問から始まった。
なにせ、元・妖精さんたちの肉体を改造できたり、自分自身を魔女でもなく肉体改造もできてしまうからである。
そういえば、植物に対しても品種改良という認識でしかなかったが、これもよくよく考えれば、一世代においての生命的な改造?変態?がなされているという事でもあるな。
ってことはだ、遺伝子レベルで分解なり再構成なりされて、変異や変態なんて事をやってるわけだ。
……なにそれ、普通に考えたら怖。
そういえば、ニチアサのマホーショージョたちって、変身する度にこんな事をやってるってるともいう。
物質変換もあれば、物質創造までやるとか……
ニチアサとかのマホーショージョ、怖っ
という、しょうもない前置き(?)は置いておいて、今いる世界の魔法や魔術には、そういう事が出来ないのは、小さいときに集会所の勉強会で習った。
見た目を変化させるものであるならば、例えば、相手に誤認させる幻惑みたいないものだったりというのがあるというのは習った。
けれど、見え方を誤魔化してるだけ(それはそれですごいけれど)であって、根本的には肉体は変わってはいない。
見た目ではなく中身を変化させる方法であるならば、身体強化という形で肉体の強度や筋力などを底上げしたりするのがあって、例えば、カーチャンの天地が覇王の拳"一撃必殺!"の必殺技を伝授された時がまさにそれ。
あと、原理がよくわからないままだったが、魔法の定番といえる放出系の火の弾とか飛ばしたり、水を出したりする奴ぐらい。
けれども、物質そのものを大きく変異させたりするのは、集会所での魔術の授業でも、身内からもそういうのを習ったり教わったりした事はなかった。
というか、"そんなものは無い"とも言われた。
そもそも、この変な魔法(?)らしきものは、身体を動かす事がまともに出来なかった乳幼児の頃に、暇という時間を持て余した為にやってた事で、誰からも教えてもらう事もされずに独学で取り組んだ結果、みつけたモノである。
前世知識を活用し、やっとこさ感じ取った魔力?なる物を"えい(濃縮)!えい(凝縮)!むん(収束)!"とやると、魔力とは異なるナニカに変貌する事を発見して有頂天になってた自分がいたね。
で、どこからそうなるのかと、凝縮というか収束の方法を、1の器に1を入れるところから、0.1の器に1を無理やり入れる、それを0.01の器、0.001の器と桁を変える格好でやっていった。
何度も検証した結果"虚空(10の-20乗)"以下の器に"那由多の桁(10の63乗)"以上の容量を収束してから変貌してしまう恰好になる事は突き止めた。
まるで、"清浄な不可思議"な経験って感じだったのを覚えている。
けれども、成長して集会所での勉強部屋に通う頃、自分はもう出来るんだぞーと、ワクワクとしながら集会所で魔法の事を一から教わったときに"アレ?"と思った。ナンカチガウと。
その時に、一番気づいた事を上げるならば、魔法や魔術ではできない、キズや病だって治せれるほどの万能な代物と気づいた点である。
ちなみに、教会の牧師様は、奇跡を使って小さな傷を癒すとかいってたけど、どうみても普通の地方診療的な医療行為だった。
あとは、掃除で綺麗にする事がしやすいとか?ピッカピカにも磨きやすいとかかな。
そうそう、除菌みたいな事もできてたはず。
衛生管理は生き延びるのに必須でしたから必死で"出来ろ!"と取り組みましたし、あと、その逆に発酵や促進もできたので、漬物も美味しくできました。
けれども、この不可思議魔力(?)に関して、他には何かないのかと、一時は農村の中の集会場にある小さな図書棚を漁ったり、魔法オタクの下の兄者や、かーちゃんのじーちゃんから色々聞きだしてみたが、それらしいことは一切出て来なかった。
そこで、今更ながら、もしかしたら元・妖精さんたちなら、何か知っているかもしれないと聞いてみた。
すると、ご年配の方(ご老人らしいけど、どうみても若年にしか見えない風体)から、そういった伝承があったとかなかったとかで、長い長い昔話をされては、その話の結末から"神の御業、神力そのものでございます"と伝えられた。
……
カミサマのミワザ……シンリキ……?
ナンデスカ、ソレー?
という新たな情報に、さらに混迷に拍車をかけてくれる訳が分からない回答を得られた。
そもそも、話の中に出てきた、この魔力を凝縮?濃縮?する方法っていうの、わいらの一族は普通に使う。
ただし、自分みたいに変質はしないけれど。
というか、下の兄者が自慢げに"凝縮して溜めておいて、後で還元して魔法発動するほうが、魔法の質と威力が段違いになるし、融通きくから便利だぞ?ラーマも覚えておきな"と、魔法オタクの下の兄者に、子供の時と教わったのだが、その後、習ってみれば村では常識の範疇であった。
圧縮や濃縮方法を自分が見つけたと思ったら、下の兄者どころか村では常識だったのが悔しかったので覚えている。
とまぁ結局は、元・妖精さんたちでも、詳しくは分からないという事が分かった。
この"清浄な不可思議なもの"になってしまっているのが気になって仕方なくなったので、これは徹底的に調べなければ!と、研究職だった前世の血が騒いだのか、調査の旅に出ることにしたわけです。
そうなってくると、やっぱり"異世界あるある"の「宗教国家」にでも赴いて調べてやれと思ったわけです。
元・妖精さんの仰られる(そういえば、言葉わかるようになったな)には、神様の御業とか何とか言っていた。
ならば、そういう"カミサマ"関係ならば、何かしらの情報が得られるであろう場所があると。
なにせ、この世界には"勇者"がいるのである。あれ?いまだと"いた"か?まぁいいか。
そして、勇者の物語が語り継がれているのである。
実家の農村の公民館的な大きさの教会でも、文字の読み書きの教科書として扱われた聖書の物語の中に、そのパーティーメンバーの中に"神の力"といえる"神術"とか"法力"とかいう聖職者や聖女様が登場していた。
聖書?教科書?で、そういう教えが使われていたぐらいである。
となると、そう言う場所には、神様の威光や奇跡なんて物もあるはずで、元・妖精さんの言う、自分が使っている"神様の御業"つまり"神力"っていう物の、何かしらの手がかりもある、という寸法です。
それならば、総本山の"聖神国"で詳しく知るために突撃ぃ!と考えに至った訳です。
そうして、新たな土地へ踏み出し、第一宿場村を発見しては突入し、宿にて夕食をとったら、とてつもなくすごい眠気がきたので個室のベッドにダイブしたわけですよ。
そしたらね、気が付けば格子に囲まれた荷車の上に"ポイッ"されてました。
どうやら、旅人狩り(?)の村とはしらずに、一泊してしまった模様。
土地が違えば、国も違いますし、文化も違うものなんですね。
治安の違いがここまでだったとは、このラーマの目を持ってしても……
朝日が昇った頃合いには、荷馬車がゴトゴトとラーマを乗せて行ったわけです。
同乗者もいたけど。
あと、やっぱりとなりの荷馬車が良かったよ。
なにせこちらの荷馬車は、加齢・泥・汗・獣の三重奏をかなでてきてるし……
おねーさんたちが乗り込まされて行ってたし、あっちの方が匂いいいかもしれないし……
ちくせう!!
自分をこっちの荷車に載せたやつ、覚えておけよ!コンチクショーメ!