#壱:初めての耳
はい、こちらラーマです。
自分は、今、魔境といわれる領域を"自分の故郷とは真逆の位置"まで移動し、さらにはその先へと進んだところに来ております。
途中、ゴトゴトと揺れる荷馬車(?)に載せられる格好で、荷台から見える格子の隙間から覗き見える風景といえば、空に飛ぶ鳥たち、初めて見るよその国の草原。
それらを眺めては、こういう風土になっているのか……
と、安心できる静かな自然が、こうも豊かなことを感じさせてくるものなのかな?と感じております。
なにせ、自分ちの実家近くの森なんて、自然が豊かすぎて逆に牙をむいてくる自然ですし。
命懸けという自然よりも、ただただ風景が流れていく自然の方が、病みかけた心が少しでも癒されるというものです。
と、そんな荷台にて、重量感のある金属性のアクセサリーをジャラジャラという音をBGMに見立てながら移動しております。
俗にいう、鎖につながれた状態で貫頭衣一枚の亜人の方々と一緒にネ!!
いやぁ、長耳(エルフ耳!)とか、もふもふ耳(獣人耳!)とか、今世でここまではっきりとした亜人の耳なんて、初めてじっくり見たね。
前世だって創作物にしかないし、こういう本物なんていない。
ましては、子供時代に突貫したナーロッパな世界のはずな領都や王都ですら、一切見ることもなかったファンタジー成分が、この小さな密閉空間で全開しておりますよ。
これはね、多少興奮しても仕方がないと思います。
ただね、惜しむらくはエルフ耳の人って美形ばかりかと思ってたら、普通に普通の顔ばかりだった。中には、髭面のオッサンもいるし、筋骨がしっかりしている方だっておられる。
というか、三個のトライアングルな世界のハイなラルにいる人たちみたいな?そんな感じとも言えます。
一方、獣人って、人の顔で獣耳が頭頂部にあるかと思ったら、あるにはあるのだけれど、獣頭で人の体っぽい恰好がほとんどだった。
いや、人の顔でと思ったら、そういう人はいないというか、普通の人の耳の箇所が毛むくじゃらの耳?になってるという、なんというか、羊?ヤギ?、巻きヅノがあるから、そのツノはちょっとかっこいいかなと思ったりはするけど。
ただね、惜しむらくは、同乗している方たちが、どうみても"野郎"ばかりでした。
も一つ言うと、どの方たちも"この世の終わり"という表情をしながら首を垂れては座っていおります。
そんな仄暗さと湿気が蔓延する中にいるのはなぜなのか?
鎖につながれている時点で、大まかというか答えがほぼ出ていますよね。
つまり、人身売買だと思うんですよ。
というか、それ以前に問いたい、問い詰めたい、小一時間ほど問い詰めたい。
ここに入れろと決めたやつ、お前どこをみて「野郎の馬車に積み込む」を選択したのかと問い詰めたい。
もう一つの馬車は、お姉さんたちバカリだったというのに、なぜそちらではなかったのかと問い詰めたい。
ふぅ……落ち着こう、物は考えようである。
いま現在、ロハで移動手段を手に入れたともいえる訳である。
ちょっと、いや、かなり獣臭いのは、その……慣れてしまえば、どうという事は……
慣れ……窓際に移動しとこ。
うん、乗り心地が最悪だし、乗り物酔いしたら悪いからね、シカタナイネ
さて、本題にもどりまして、同乗する理由としては、なにせ、向かうはよそ様のお国である。
そのため、"地理などの知識はさっぱりわかりません"ってところがある。
また、こうして商品として扱われているって事でもあるならば、つまり、表の稼業だろうと裏の稼業だろうと、とりあえずはそこそこ大きな街につくだろう。という打算が出てきたわけです。
というかするっしょ?
するよね?このまま僻地の開拓村へポイッはないよね?
なにせ、聖神国っていう仰々しい名がついてるし、LIGHTでLAWな国でもあるでしょうし。
いやまて、逆にあの世界みたいなLIGHTでLAWな国なら、普通にやりかねないか?
選民思想がどうとかを空間歪曲レベルな思考で。
……
ちょっと自信なくなってきたわ……
い、いや大丈夫。
こんな手枷や足枷なんぞ、いつでも"えい、えい、ふん!!"とやれば、あっというまに解決できましたし。
というか、やってしまって"ヤバッ!"って思ったりして誤魔化すために、"ふんぬっ!"と戻しはしましたが。
あぁ、お空が青いなぁ……
そもそも、こんなところに来たのには、一応は目的がありまして……
もうちょっとだけ、ある分を書き直して載せておきます。