表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/33

#Ⅰ:神様って、いると信じてる?(上)

 神様って、いると信じてる?


 ──私たちが生まれた理由は、神様が私たちを創造したからと、伝えられた。


 何のために、この過酷な森の中に?


 ──それは、神様が与え賜うた試練の一つだからと、教わった。



 この森の中で生まれた私たちは、森から出る事はかなわない。

 この森から生まれ出る"モノ"と呼ばれる物こそが、私たちの糧であり、命の源でもあるからだ。


 私たちの存在は小さい。

 小さいから"モノ"は少なくて済んでいる。

 けれど、小さいというのは弱いという事。


 小さくて弱い私たちは、魔蟲や魔獣たちからも隠れる様に、この深い森の片隅でひっそりと暮らすしかなかった。



 けれど、あの日、私たちがいる村が襲われた。

 襲ってきたのは、深淵部にすら現れてこない狂獣と呼ばれる存在。


 狂獣は"モノ"を喰らうと教わった。それも際限なく。欲望のままに。


 それらから身を守るため、本能なのか勘なのか、狂獣は深い森に来ることなどなかった。

 けれど、そのはずなのに、地を這うその狂獣は、片隅に隠れる様に存在していた住処を襲ってきた。


 いつもなら、私たちが深い森から出た時でさえ、私たちの事なんて一切見向きもせず歯牙にもかけてこない、そんな取るに足らない存在として扱われたのに、その日は、襲い掛かって来た。



「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

「どこまで、にげれば……いいの……?」

「わかんない……わかんないけど……逃げなきゃ……」

「おとーさんと……おかーさんは……?」

「わかんない……わかんないって……」

「おとーさん……おかーさん……」



 襲われた隠れ住んでいた皆は、散り散りに逃げた。

 ワタシも、小さな妹を連れ出しては逃げ出した。


 妹も、訳も分からないけれども、危険であるという認識を持ったのか、わたしの手をしっかり握り返して一緒に逃げ出した。



 私たちよりも大きな狂獣からすれば、私たちは本当は食糧の一つにしかないのかもしれない。


 そんな相手から、私たちは身を隠すように生きていたのに、いままでも見つけられても、一切こちらに害をなす事なんてなかったのに……いつものように、気づかないか、無視してくれるものだと思っていた。



 けど、なんで?なんで?なんで?



 疑問がたくさん生まれてくる、けれど、今は見つかれば其れまでで……

 だから、逃げないと、逃げ延びないと、せめて妹だけでも助けないと……



 そう強く思っては、森の中を逃げ惑った。



 けれど、小さな私たちの飛翔能力では、逃げる速度も限られる。

 隠れては逃げて、隠れては逃げてをしていたが、追いかけてきた魔獣に追いつかれる。



 それでも、私は逃げるしかなかった。

 ただ、小さな妹を連れて逃げるには限度があった。



 だから、私は決めた──



 妹を、大きな大木の切れ目の中に隠し、


「お、おねえちゃん?」

「いい?息を潜めて、ジーっとしていたら大丈夫だからね?」

「いや、いかないで!いかないで!!」

「大丈夫よ。あんな狂獣なんて、お姉ちゃんが撒いてくるから……ね?」

「ちがう、ちがうの……」

「それに、かくれんぼは大得意だったでしょ?」

「そうだけど、ちがうの……」



 妹は、何かを察してはいるみたいだけど、それを口にさせちゃいけない。

 私の決意が揺らいでしまうから──



「これ、お守りね。大事にもっていてね」

「えっ?これって、お姉ちゃんの宝物で……」

「いいからいいから、あなた、欲しがってたでしょ?」

「いらないっ!いらない!!」



 拒絶する言葉を聞いた時、近くで魔獣の咆哮が聞こえた。


 もう、迷ってる時間なんてない、お守りとなる細工品を妹の手の中に無理やり押し付けて、その場を離れる。

 遠くで、お姉ちゃん!という声が聞こえたが、それ以降は聞こえなくなった。



 なにしろ、いま自分は狂獣の目の前に出て、相手の注意を引き付ける必要があったから……



───────────────


 ……ぬぅ


 なんか、嫌な雰囲気を感じ取ったから来てみれば、あれはファンタジーお約束の西洋風ドラゴン(飛べない奴)ってやつかな?


 というか、T-レックスだ!すげぇ!動いているの初めて見た!おら、ワクワクしてくっぞ!以前みた、コモドオオトカゲとは、全然迫力が違うな!


 って、T-レックスの奴めは、何かを追っかけている感じか?

 なんつーか、台所に現れたGを、殺虫剤を片手に追いかけている様な雰囲気とでもいったような?どれどれと観察してみると、そこには、二つの光点が木々を縫うように飛んでいる?


 む、むむむ?

 だが、その追いかけている相手がいかんな。

 ああ、ああ、いかん。


 こんなファンタジーの世界において、その存在が十二分にアリエールものを追いかけているとは言語道断!



「とうりゃぁ!!」

「ゴアッ!?」



 T-レックス(?)の側頭部にドロップキックをぶちこむ。

 その痛みによる怒りの矛先がコチラに向いたのを確認し、半身ずらしの自然体で睨んでおく。



「いけない、いけないなぁ~、こんなファンタジーの定番である、羽根で飛んでる妖精さん(フェアリー)を追いかけるとか、いけないなぁ~お・し・お・き、しちゃうぞ?」



 そう言葉を投げかけたと同時に、T-レックスから不意打ちのごとくブレスをぶち込まれる。

 しかも、避けたら妖精さんに当たる位置で。



「小賢しいっ!!オカン直伝!消火拳ぃ!うぉらっしゃぁ!」



 説明しよう。消化拳とは!

 オカンの家事は、たまーにデンジャラスになるときがあるが、その拳に込められた魔力(?)と、魔力(?)の乗った風圧によって炎そのもの方向性をコントロールしては、消火をも行う拳技なのである。



「いっちょあがり!」

「!!?」

「#1e丫?」



 それでも、こちらを睨み込んでくる火を吐くT-レックス。

 今度は火の玉ではなく、火炎放射と来ましたか。

 けど、やる事はかわらん!



「炎の扱いには、慣れてんだよぉ!!防火掌底打ぁ!」



 説明しよう!防火掌底打とは!

 掌底に集めた魔力(?)によって、それ以上、火が燃え移らない様にする技である。

 火元に返すという事もするが、これ、密閉場所だとバックドラフトみたいな事なるから危ないから、みんな、マネしちゃだめだぞ?



 ただ、この炎の熱さ……熱い、熱いぞ……こう煮えたぎる熱さ……うぉぉぉ、燃えてきたぁぁ!!



「もっと熱くなれよ……熱い血、燃やしてけよ……熱くなった時が、本当の自分に出会える……だからこそ!もっと!もっとぉぉぉ!!熱くなれよおおおおおおおお!!」



 炎に当てられてしまったのか、ついついそういっては魔力(?)のほんの一部を放出してしまった。

 そしたらT-レックスは、首をすくめたかと思ったら急に尻尾巻いて逃げ出しちまった。



「……なんで?」



 炎吐くTーレックスなんだし、もっと火力上げてもよかったのに?

 オカンのたまに暴発する火力なんて、この火じゃない…もとい、比じゃないのにさー



 まぁ、いっか。

 そ・れ・よ・り・も



 妖精さんですよ?妖精さん!フェアリーって奴ですよ?

 某、女神が転生する奴でも、上位にランクインするレベルで相棒とも称されるアレでございやす。


 こりゃもうね。友好的かつ紳士的……いまは淑女的にか?で、第一印象を大事に接触を図るべ……



「気絶してらぁ……」



 さて、どうしたもんだか……



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ