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特にこれといった目的もない異世界転生  作者: zaq2
2:       
31/33

#六:アンデッドっているのね

「次行くよ、しっかりと護衛をしてくれよ」


 連れられる形で連れられて、だんだんと街からは離れていく。

 いったいどこへ連れ出されるのかと思ったので


「"どこへ?"」

「黙ってついてきな、確認もかねてだよ」


 バッサリだった。

 ま、まぁ、雇われの身ですから、護衛役として周囲警戒をさせていただきます。


 歩いてはいくが、街道とは異なる小さな壁門の近くまで来てしまった。

 守衛に挨拶を行った後、さらに近くの林の中へと先に進む。


 お仕事として、周囲警戒をしていますが、特にコレといったのがなく、獣ぐらいしかおりません。


 何もない獣道とでもいう感じ。

 その道を少し進むと開けた場所に出てきた。


 気配的に、人みたいなのは、二人?がいるのは確認したが、隠れるそぶりとかはないため、最悪の事を考えれば、強盗のたぐいか何かか?と警戒してはいたが


「メルシェさま、お手数をおかけして」

「いいんだよ、こっちが好きで首を突っ込んでるだけだからね」


 女将とそう話込み始める。

 知り合いだったぽいので、女将を置いて周囲状況を確認する。



 広い土地、すこし膨らんだ箇所に突き刺されれている一本の棒。


 

 どう見ても、墓地です。

 そういえば、ファンタジーでよくある死人(アンデッド)とか見たことなかったなと。


 地元の墓地とかは、よくある霊魂的というか怨霊的とでもいうか、そういう雰囲気がなかったな。

 それと同じ感じで、ここもそんなに変な感覚はうけない。

 ただ一部、そういう雰囲気ではないところがあるけれども。



 その雰囲気の場所へと女将の後をついていくと、二つの藁布に隠されている何かがあった。

 まぁ、ホトケサマといったところか。



「この子らかい?」

「はい」

「この街の子じゃないね、他所から連れてこられてってところか」

「やはりそうですか……」



 その下にあったのは、耳のとがった亜人。

 よくある、見目麗しいとかいう言葉が似合っていただろうとでもいう存在。



 ……どうみても、ファンタジー定番のエルフさんじゃん。

 えっ?マヂ、嘘やろ……というか、酷すぎんか?


 グロ耐性は、野盗絶対殺すマンな時のオトンの所業で慣らされたけど、それでも酷すぎるという言葉しかでないぐらい、綺麗とは程遠いホトケサマだったからだ。


 頭部から下肢まで、どの場所にも何等かの損傷が発生している。


 一番の損傷といえば、胸部装甲がゲッソリなくなり、心臓部などの内臓が無くなっている点だ。

 確実に言えることは、人の手で殺されたといえるレベルでもあり、"21グラムの重さ"は等にに消え失せているという事。



「"酷いな……"」

「ふん、これがこの街の()()だよ」

「"そんな事が、日常としてあるのか?"」

「言い過ぎたね、年がら年中って訳じゃないよ。雨季の時期は、本当に、日常みたいなもんさね」


 "イヤになるよ"という言葉をつぶやきながら、二つのモノ言わぬ躯に悲し気な視線を向ける。


「騎士様、雨季でのこの街では……いいえ、この国では……」

「私たち亜人の扱いは、本当に、酷いものなんです」


 外套をかぶっていた二人が、その該当をはずすと、これまた丸耳がピョコと出てくる獣人系の亜人だった。

 もう一人も、巻きヅノを生やした白髭の獣人であった。

 彼らも、その遺体を見ては、悲しいくも悔しいという表情をしていた。

 

 ただ、二つの遺体をそのままで送るにしては、何か物悲しいと感じ、


「"すまないが、この姿では余りにも不憫すぎる。少し、手を差し伸べてもよいだろうか?"」

「ああん?お祈りでもしようってのかい?もうじき葬儀が始まるから、やるなら手短にしておきな」

「"そこまで時間をかけないさ"」


 ファンタジー力を込めて身綺麗にしてやろうと、その右胸があった箇所に触れる。


 触れた第一印象は、"冷たい"


 エルフさんとの初接触がコレとか、きつすぎひん?

 悲しいよね……ほんと、命が軽すぎる世界ってさ……。


 っと、いかんいかん。

 余計な思考はかなぐり捨てて、ファンタジー力(えいめん)


 少しまぶしい光と共に、一人目の躯が綺麗になっていく、遺体となっているため"再生"はできない。

 そのため、"修復"を行う、代替品としては、いまも余ってる軟膏を数個使って。


 光が収まると、スレンダーというには小さすぎ、かといって豊満というには大きすぎという、ちょうどよいサイズで収まっていた。


 見目麗しく、慎ましい存在をもち、いまにも起き上がりそうな綺麗な身体になっていた。

 やはり、エルフは"そこそこ"という事なのだろう。


 ただ、"21グラムの重さ"は存在していないので、遺体は遺体のままではあったが……


 そう納得しては、二人目に取り掛かって、同じ様に綺麗さっぱりとしておいた。

 なお、こちらは、スタイリッシュラインであった。



「えっ?い、生き返った‥‥‥?」

「そんな事は……生きているかの様な……いや、やはり死んでいるな」


 獣人のお二人は、先ほどの遺体を検分しては、そう結論づけていた。


「ちょ、ちょっとお待ち!いったい何したってんだ!!」

「"いや、あのままでは、あまりにも不憫だと思ってだな"」

「それは……じゃなくて、今、何をしたかと!!」

「"何をといわれても、直しただけだが"」

「治す?そんな事は生きている相手でないと無理だろう!」

「"そうは言われても、修復や修繕を行っただけなのだが……"」

「修復・修繕……ああ、そういう事でしたか」

「亡くなった二人に変わり、お礼を申し上げます」


 獣人の二人は、手を胸に当てて礼をしていたが、一方の女将といえば、


「ったく、あんたの言い方、紛らわしいんだよ!」


 何か、納得した様な表情になる女将に、ひっぱたかれては「ありがとよ」と一言つぶやかれた。



 うむ、きっと、これはツンデレという奴だな!



   *   *   *


「またせたか?」

「いや、そんなには待っちゃいないよ?」


 あれから雑談を交えてしばらく待っていると、小雨が降りだしては雨模様となっていった中、太っている人物が小走りでやってきた。


 獣人の二人は、外套をふたたび深くかぶり、女将も雨具を身に着けて待っていたが、自分は兜してるからまぁ、そのままの状態だけど。


「この二人でいい……の……。失礼、遺体を見てもかまわないか?」

「何かあったのかい?」

「……確認したい事が出来た」


 女将が首で向けて合図しては、二人の獣人が藁布をめくりあげる。

 太っている人物は、その遺体にたいして、何かブツブツと独り言をいいながらも検分し始めていた。


 そんな作業を待つ間、二人の獣人と雑談しながら聞いてみる。

 太った人は何者なのかと。


 帰ってきた回答は、儀式的な事を行うために呼んだ人らしい。


 なんでも、何もせずに被害にあった遺体を処理をすると、怨嗟(えんさ)に濁った魂によって死人(アンデッド)化するために、そうならないように魂の浄化を行っては神の身元へと送るために火葬をするとの事。


 魂、とうに消え去ってるから、そういうの無いと思うけれども、そういうのが確立されてるのかと、経験則から導き出したのだろうなと。


 というか、死人(アンデッド)っているのね。


 まぁ、あの教会?みたいなとこに、霊的な何かみたいなのがいたし、普通にいるんだろうな。

 レイスとか、リッチとか、うーん、さすがファンタジーな世界よ。


 また、この墓地も、亜人たちだけの墓地らしく、ヒトにはあまり知られていない場所との事。


 じゃぁ、あの太った人は?というと、ここだけの話で、先ほどの教会の偉いさんが、亜人差別の中、コッソリとやってくれるとか何とか。


 あと、名前を聞いたら知らない方がいいとか、知らないフリができるからとか。

 "それはたしかに"と、感心していたら、太っている人から驚くような視線をこちらに投げかけられた気がした。


「まだかかるのかい?」

「ん?んん、そ、そうだな、あまり時間をかけすぎたか。では、始めるとする」

「ああ、たのむね」


 女将さんの声かけから、太った人は咳ばらいをして、弔辞的な言葉を紡ぎだし、何らかの儀式を始めていった。

 それと同時に、その太った人の外套から光る球が飛び出してきては、遺体へと光の粉を振りまくようにしていた。

 その光の粉がふりまかれた個所から、静かに炎にまみれていった。



「この者たちに、次なる魂に、幸アレ……」


 

 参列した全員が、片手を胸に当て、黙とうをささげた。


 こちらも、それにならおうとしたとき、光の球が急にこちらへと飛んできては……って、近くで見たら光ってる妖精みたいな?うっすらと人型を形成していて、



<ありがとう御座います。"アフ・デト"さま>

<彼女たちの次なる生は、確実に良い生となりました。これも貴方様の大いなる慈悲の賜物でございます>



 そう言っては、目の前で頭を下げる格好で浮遊していた。

 そっか、そっか、来世は良い形になるのか、それは良かった。




 ところで、アフ・デトって何?



耳の長い亜人を登場させたかったから書いた。

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