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特にこれといった目的もない異世界転生  作者: zaq2
2:       
24/33

#一:シンチュウ

 青く雲がまばらに存在する空が続く中、いくつもの(わだち)の跡が残る土だったものの道で……





 踏ん張っています。



「気合いれろぉ!!せーのっ!!」

「よいしょらぁ!!」

「おるぁぁぁぁ!!」

「"ちぇりおぉぉ!!"」

「もう少しです!!()()()様!」



 筋骨隆々のむさくるしい野郎の掛け声と、場違いな女性の声が混じっています。

 なにせ、泥濘(ぬかるみ)に嵌った乗合馬車の客車を救助すべく、野郎にまじってみんなで押している最中でして……


 前日に降った大雨のおかげか、あちらこちらの乗合馬車に荷馬車が、邪魔をしては道をふさいでいるという現象、いうなれば、血管が詰まったという状況でして。


 なぜにこんなことをしているかといいますと、ただただ移動するだけだと、旅の道中としては、些かメリハリがないなと思い手伝う事にしたのですが、これがまたどうして力加減が難しい。


 全力でやろうものなら、ぬかるんだ地面をブッパするし、なおかつ荷台が破損する。

 かといって、持ち上げてやってみようと思ったが、これも車軸方向はいいが、筐体強度がヤバかった。


 なにしろ、その積んである量があれだ、東南アジア系の『積載量"詰めるだけ"の限界を超過して積みました!』みたいな?


 そのためか、車体をよくよくみれば、あちこち(しな)っております。

 そのおかげでか、破断もせずに耐え忍んでるみたいですが、よくもまぁ、やるもんだと感心したもんです。



 雑談ついでに聞いてみれば「積めるだけ積まにゃ、損だろ?」との事で、商魂たくましいです。ハイ……


 

 という事で、結局は後ろから押す事になります。

 そんな馬車が、一台、二台、三台、四台、五台、いっぱい、たくさん……お、押す……ド、ドラ…ムカン……お、おす‥‥‥



「お疲れ様です。白騎士様」

「"はっ!い、いったい、自分は……"」



 いつしか、無心に近い心境になりかけていたようです。



───「騎士様、ありがとう!」

───「ありがとうございます。白騎士様」

───「騎士の兄さん、助かったよ、これ、少ないけどもってけ」

───「今度、村に立ち寄ったら呼んでくれ、酒でも奢るからな!」



 幾つもの馬車に協力しては、幾人ものお礼を受けては「"困った時はお互い様"」という言葉を無難に返しておく。

 そして、二人きりになると、となりで「仁心……さすが"我が主"でございます」と言ってくる、大きい双丘をぶら下げている存在はおいておいて……



 そんな感じで、首都となる聖都に向かう道すがらに、こういう事をしながら旅を続けております。

 一人と……視線をむけると、笑顔で返してくれる"サグア"さ……サグアと。




   *   *   *



 あれから、こちらがどう説明しても「世を忍ぶ仮の姿ですね?」とか「受肉した御姿ですね」とか「そういう設定ですね?わかりました」とか「では、私は従者として……」と、深いわかりみ?みたいな?表情で告げてきた。


 そういう真剣な顔で斜め上過ぎる解釈されて、こちらが何を言っても「そういう設定」扱いされると、説得という行為に、もうどうでもいいやと諦めの境地へと至りました。



 こういう人を何だっけ、何だっけ……

 ああ、あれだ、狂信者ってやつだ。うんうん……うん?




 ……狂信者?えっ?




 いまさらながらに気づく。

 もしかして、このファンタジー力、人に使ったら"狂信者"を生み出すのか?と。


 思い返せば、身体が変貌した元・妖精さんたちや元・大鬼さん、それに元・豚鬼さんに元・小鬼さんたち。

 アイツらも、敬うというよりも、崇めてる感じだった様な……


 そして、目の前でテキパキと野営の準備をしてくるサグアさん。




 ……

 ……

 やっべぇ……




 いやまて、まつんだ。

 十二分な統計数値として、知ってるデータが偏ってる、偏ってるぞ!!


 そ、そうだ、うちの村の衆とか……は、そんな肉体が欠損とかする傷なんて起こすわけもなく、ファンタジー力つかった事ない……あ、小さい頃、怪我した子を直すのに使ったわ‥‥‥あのクソガキ大将、いま、元気にしてるかね?


 まぁ、クソガキ大将のは擦り傷程度だし、程度にもよる?いや、肉体構造が変わってないから影響なし?


 うーん、わからん。



「"我が主"よ、準備が整いました」

「いや、そういう言い方しなくていいって言ったじゃん」

「ですが、"我が主"は"我が主"であるため、そういう訳には」

「ラーマ。そう呼ぶ事、いいね?」

「で、ですが、卑小な身とし「いいね?!」」


 ちょっと圧をかけておく。

 周囲から、獣の気配とかきえちゃったけど、まぁいいか。


「……は……はい……承りました。ラーマ様」

「様もいらないけれど?」

「そ、それだけは何卒……」


 なんというか、絶望?という表情されると、それ以上いえない……


「わ、わかったから、それでいいから。それで……サグアさん?」

「私めの事は"サグア"と。"おい"や"お前"でも構いません」



 今度は、逆威圧を感じてしまった。

 あ、これ、何言ってもダメなやーつ……こういうのは素直に従っておくべきです。

 あと、カーチャンの圧と同じ雰囲気なのは、なぜなのか。



「アッハイ、サグアさ……」

「"サグア"です」

「"サグアさ…"」

「"サグア"です」

「"サグ…"」

「"サグア"です」

「……サグア」

「はい、"我が主"よ」

「いや、だから、ラー……もういいや、二人の時だけね」



 とまぁ、そんな押し問答を続けるのは不毛すぎるので、早々に敗北を喫しては話を続け、知っている情報を聞き出しますと……



 現在いる場所、はっきりわからない。たぶん辺境。

 向かう方向、聖都。だいたいあっちらへんのはず。

 亜人、差別が酷い。



 かー、なんねー、なーんもはっきりわからんままどー



 という、詳しくわからない事が分かった。

 あと、亜人差別がとてもとても酷いらしくて、人権?生命権?が低い扱いとの事。

 なので、"サグアさ……サグア"曰く、人前では、鎧甲冑の姿で隠した方が良いとか何とかと。


 何でも、流れの放浪騎士という体でいておけば、ある程度は隠せれるとか何とか。


 そりゃぁ、肉体変化で色白の肌とかできないかなと思って試したけどね?

 なぜか小麦色(濃いめ)の肌(+マチョ)にテカリがついてる恰好にしかならないって、どうなん?と思いました(まる


 まぁ、うん、何となく差別的なのは察してはいたよ?あの、荷馬車でゴトゴトと運ばれてる時点で。

 改めて言われると、やっぱり、国が違えば文化が違うもんだと思いました(かしこ



 なので仕方がない。

 この国において、人前ではあの恰好でいる方針とします。

 ちびっこVerで、しょっぱなから面倒ごとに巻き込まれたりするわだったし。

 さらに言えば、また、変態に襲われるとか嫌だし?



 うんうん、と今後の方針を固めていたら、サグアさ……サグアが、ササっと腕を振り払って"白い炎"で火起こしをして……は?



 …………

 あれ?



 その白い炎って、あれだよね、いつから使えたの?えっ?

 御遣いとして"シンチュウの宣儀"の後に、何故か理解し使える様になった?



 あ、そうですか、なるほど。……なる、ほどう?





 いやいやいやいやいや、ちょっとまって?

 サグアさ…‥サグアが、ファンタジー力つかえてる件について。




 あと、さっきからなんでわかるの?

 その都度、圧を向けるのやめて?


・〇信者が「そういう設定ですね」で押し通す状況を書きたかったから書いた。

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